heretic
□シンパサイザー
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「と、いうわけで」
どういう訳だ。
と、小さく呟いた台詞にマリクの肘鉄を食らう。
朝呼び出された13班は、総隊長室でアライヴと一緒に仲良く状況説明を受けていた。
「二人には13班に所属してもらいます。ミズホちゃんは班で行動、サラはアライヴの指示に従って行動してもらうことになるわ」
「よろしくお願いします!」
丁寧に二人が頭を下げる。
それを渋い顔で見ているリアルとアライヴをよそに、シンディ達は愛想よく返事を返した。
「よろしくねー」
「シンディ軽い」
「えーだってー」
ピシャリとリアルが注意すれば、シンディは口を尖らせて抗議する。
暢気な様子に、アライヴも呆れたようにため息をついた。
「女の子が増えたもんねシンディちゃん」
「そうそう、むさ苦しい班にアイス君とメイリンさん以外の癒やしがー!」
「悪かったなむさ苦しくて!」
苛ついた様子でリアルが手を腰に当てる。
何故そんなに苛ついているのか分からない二人は、不安げにその顔をのぞき込んだ。
「リアルは私と一緒にやるの、イヤなの?」
「嫌だとかそう言うんじゃない。イセリアだぞ?ノーバディが相手なんだ」
サガラ者がいきなりノーバディと戦うのが無理な話なのだ、と眉間にしわを寄せる。
ノーバディと震鬼は倒し方が違う。
ただ武器で倒すだけでは奴らは再生し、あるいは全く歯が立たなかったりする。
それぞれがそれぞれの方法で討伐しなくてはならないのだ。
それは一朝一夕に習得できるものではないし、なにより鬼とは数が違いすぎる。
「わかるだろ?触れても平気な震鬼とは違う。数だって多いし、一瞬のミスで大怪我することだってある。お前らそうなったらどうするんだよ」
「そんなの皆同じじゃない!」
と、諭すように言われれば、負けじとミズホが声を張る。
「皆同じだよ!むしろリアルとかお兄ちゃんの方がしょっちゅう怪我してるじゃない!」
「確かに…」
と、リライヴが妙に納得したように呟く。
しみじみとしたその様子に、シンディとマリクが思わず小さく吹き出す。
しかしそれに怯むことなくリアルは笑った二人をぎっと睨みつけて黙らせた。
「そんなの当たり前だろ?俺らは一番上の部隊にいるんだ。アライヴだって隊長だから難しい任務をする。そんな任務内容で無傷で帰ってこられる方が難しいし珍しい。お前らイセリア初心者がいきなり13班ってのが無理な話なんだよ」
「そんなことないもん!」
「そうだよ!私なんか一応アディアさんといい勝負したんだよ?」
と、ミズホを援護するようにサラが前に出る。
リアルは苛つきを隠すことなく牽制した。
「サラはちょっと黙っとけ」
「何その言い方ー!?」
「あーもう喧嘩するな!ちょっと落ち着け」
いよいよ喧嘩腰になってきた三人に、アライヴが割って入る。
それまで止めもせず面白そうにしていたアディアも、今度は困ったように苦笑いした。
「アンタもいいのか?妹のことだろ?サラだって大事があったら、」
「ミズホはサガラの隠密だ」
「どうすんだ、て、は?隠密?」
いきなり意味の分からない単語を言われて言葉を失う。
なんだそれ、と首を傾げれば、アライヴは察してかミズホの立場を一度はっきりさせておこうと一歩前に出た。
「隠密って、スパイみたいなことするひとですよね?」
アイスの言葉に一つ頷く。
「ミズホは鬼の所在や裏情報なんかを調べて伝える仕事をしてる。普段はサガラの若女将をやってるが、緊急時には俺の代わりに鬼を退治することもある」
アライヴ曰く、嘉神の後継が正式に決まった後も、ミズホは日々修練や、時には赤鬼退治をすることもあるのだという。