heretic
□本音
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「…は?」
「だから、承認式」
「なんで今更。もう1ヶ月たったんだぞ」
「決まりなんだからしょうがないでしょ。忙しかったし」
ルークと一緒に総隊長室に顔を出すと、すでに他の二人が集まっていた。
アディアの副官であるリアルとメイリンもいる。
促されるまま椅子に座ると、今回の「用事」の話が始まったわけだ。
「陛下もあんたが顔出しに来ないから一度見ておきたいって仰ってるし。それに‘クイーンズナイツ’の入団式も一緒にやるし、どう足掻いてもこれはやんなくちゃいけないの」
「はぁ…面倒くさ…」
「あきらめろアル、これはどうしようもない」
思いっきりだるそうな顔をするアライヴの肩にジェイドが腕を乗せる。
ただでさえ毎日忙しいのに、そんなことに時間を割く余裕はない。
が、女王陛下のお達しなら仕方ない。
なにが「少し伝えたいことがある」だ、全然少しじゃないじゃないか。
アライヴは心の中で毒づいた。
「あ、それから式にはサガラも来るからね」
「…はい?」
「毎回そうなの。知らなかった?」
「…あぁそういえばそうだった、ような…」
ぼんやりとする記憶をたぐる。
そういえばルークの承認式には出た。
アディアの時は自分も嘉神の継承式で出られなかったのだ。
「しっかりしてよ。今回は当代嘉神と、浅葱さんと水無月さんだからね」
「………なに聞こえないもう一回言ってくれる?」
不穏な単語を聴いた気がして思わず聞き返す。
アディアはなんなんだと言いたげにもう一度繰り返した。
「だから、嘉神と浅葱さんと水無月さんが来るって」
今度こそしっかり名前を聞いたアライヴが頭を抱えてうつむく。
いきなりの行動に皆がはてなマークを頭に浮かべた。
「しまった…!」
「どうしたのアル」
ルークの問いには答えないままアライヴは呻く。
嘉神、は代理をしているアズマの事だ。
浅葱はアライヴの義父で、彼は先代嘉神だから承認式に招待される。
そこまではいい。
問題は最後の一人だ。
「殺られる…!」
「は?」
皆が異口同音にそう呟く。
若干理由のわかっているリアルだけが密かに声を殺して笑っていた。
「なに笑ってんだコラ」
「え?いやまぁ、うん。ご愁傷様です」
「人事だと思って…こっちは笑い事じゃないっての」
心底困り果てた様子に皆がはてなマークを浮かべる。
そして皆口を揃えてこう言った。
「殺られる…って?」