heretic
□試行錯誤
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「契約は主が死ねば破棄される。つまり彼女がアライヴのみを主と主張する限り、彼は生きていることになる。わかった?」
「あー…はい、大体は。というか、なんで今更捜索なんか…」
彼女、アリスが誰とも契約しないなら、アライヴは生きているとすぐにわかりそうなものだ。
彼が処刑されたのは四年前、それまで放置していたのだろうか。
「アリスがね、彼が処刑されたその日から姿を人にしなかったんだ。僕たちの命令を彼女は聞かないし、問いかけても返事がなくて。だから死んだと思ってたんだけど、一昨日急に僕らの前で人の姿をとって「マイスターが帰ってくる」って。びっくりしちゃってさ」
ようやく話の全容がわかったリアルは、あぁね、と呟いた。
彼女に話を聞くと、アリスも死んだと思っていたのだと言う。
世界のどこにも主の気配を感じず、彼女も沈黙したままだったのが突然その気配が返ってきたのだという。
「やっぱり、また殺しちゃったりするんですか…?」
マリクがおそるおそる問う。
総隊長だった人を殺す、というのは自分達の実力的に無理な気がする。
そもそも任務でも殺人などしたくはない。
「いや、あいつにはもう一度イセリアに戻ってきてもらう」
「え?」
アートの言葉に意外だと言うように皆が目を見開く。
アライヴは裏切り者、なのにもう一度受け入れるというのだろうか。
「裏切り者とは言っても彼は強い。それに今彼は20歳、もう重責に堪えられるだけの精神力は育ったはずよ」
「でも…」
「悪意があって裏切った訳じゃない。あいつはその時16歳で、精神的にも未熟だった。嫌なことが重なって、逃げることでしか自分を保てなくなったんだ」
ジェイドはそこで一旦言葉を切る。
改めて13班の方を向き、彼は真っ直ぐにリアルの目を見ていった。
「世界の胎動が始まった」
「!!」
リアルがはっとする。
劉綺と黒い少年も言っていた言葉。
やはり、何かが起こっているのだ。
「今その投げっぱなしの仕事を片づけるときが来たんだ」
今こそその力を、真価を発揮するときだと。
「胎動、正確にはノーバディ達の亜種のようなものが出始めたんだ。それを相手にするためにも、戦力を揃えたい。だから彼には戻ってきてもらう」
「亜種…」
「13班」
「っ、はい」
アディアの声に13班全員が顔を上げる。
「イセリア前総隊長アライヴ=ルード捜索、出来るわね」
皆が顔を合わせる。
不安は残る、が、やらないわけにはいかなかった。
「イエス、マム」
ここでぐだぐだ言うだけ時間の無駄だ。
リアル達は隊長に向かって敬礼して見せた。