heretic

□試行錯誤
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「は!?師匠!?」
「…おぅ」




レジスタンスアプローチの調査から一週間、リアルは食堂でマリクとシンディ、それにメイリンに問いただされていた。




「嘘でしょ!?あのカガミさんが師匠なんて…」
「だからこんな嘘言わないっつーに」




マリクが聞きたがっていた四年前の話を聞いた後、シンディはふと怪しいと思っていたカガミとの関係を問うた。

するとわかった新事実に、皆四年前の話とは比べものにならないほど食らいついた。




「はー、うらやましい限りだねリアル君」




メイリンが心底うらやましげにため息をもらす。
その言葉にリアルはとんでもないという風に息巻いた。




「何言いますか!滅茶苦茶厳しいし手加減ないしうまくいってもせいぜいまぁまぁだな、位しか言ってくれないしそりゃあもう鬼みたいなんですよ!?」




リアルは一つ年上のメイリンに対して敬語を使う。
それはカガミから教わった「最低限の敬意」からだ。




「いいじゃない、それで」




にこりとメイリンが笑う。




「いやいやいや、なんでですか」

「それだけ本気でリアル君を鍛えてくれてるってことじゃない。やっぱり私はうらやましいな」

「…はぁ」




全く毒気のない顔に、リアルは一気に脱力する。
確かにだらだら教えられるのも逆に腹がたつ。
そう考えると、自分は恵まれているのかもしれない。

口の悪さはいただけないが。




「ねぇ、いつ頃弟子入りしたの?」
「んー?」




ずいっとマリクが身を乗り出す。
リアルは13歳でイセリアに入隊したが、アカデミーには行っていない。

その前から師弟なら、それなりの付き合いはあるはずだ。




「えーと………八年目、かな多分」
「八年目!?」




八年目、ということは当時リアルは9歳、カガミはまだ12歳だ。
言ってしまえば、子供が子供に弟子入りしたことになる。




「なんでそんながきんちょのくせに弟子とかそんなこと知ってたのよ」
「がきんちょは余計だ!…俺がクオレのハーフだろ?いじめられてたときに助けてくれたんだよ」




クオレは13年前にイセリアとの間に紛争を起こした種族だ。
実際に蜂起したのはごくごく一部だが、そのせいで今は差別対象となってしまっている。

リアルは祖父をクオレに持つ、「隔世代ハーフ」なのだ。




「やっぱ強かったんだ?」
「大の大人を軽くぶっ飛ばすくらいにはな」

「へぇー…」




三人が三人とも何ともいえない顔をした。
さすが歴代最強の今上、幼い頃から強かったのか。




「リアル君は、その強さに憧れたんだね」
「その時はそれはもう素晴らしい人だと思ってました」




思ってました、の部分を強調して言うリアルにメイリンは苦笑する。
まぁ確かに、理想と現実は違うものだ。




「でも、尊敬してるでしょう?」
「………まぁ」




ふてくされながらも決して否定はしないリアルは、確かにカガミを尊敬している。
それは八年の月日が作り上げた、揺るぎないものなのだろう。




「じゃあ、いいじゃないそれで」
「そう…ですかねぇ」




腑に落ちない様子のリアルに、シンディが身を乗り出す。




「わがままねー、そんな人もいない私たちより恵まれてんじゃん!」
「そうそう、ねぇアイス君」

「はい!」

「うわっ、びっくりした!」




突然現れたアイスにリアルとシンディが一緒にがばりと振り返る。

幽霊でも出たみたいな反応に頬を膨らませたアイスは、手に持っていた書類をぶっきらぼうに兄に手渡した。




「んー…?何これ、捜索任務?」
「誰の?」

「あー、と…?」




――アライヴ=ルード。

どこかで聞いたこともある気がするが、ぴんとこない。

おそらくは男性だろうが…。




「詳しいことは総隊長が話してくれるって。明日の10時に執務室に来なさいってさ」

「了解、10時な。聞こえた」
「もちばち!」
「もちばち…?」




ぐっと親指を立てるシンディにメイリンが首を傾げる。




「もちろんばっちり」




にこっ、と語尾に星マークでもつきそうなノリで説明したシンディを見て、リアルは白々しく「解散また明日ー」と席を立つ。

鉄拳が飛んできたのは、言うまでもない。



 
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