heretic
□聖域
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長い塀、木でできた建物、屋根に敷き詰められた瓦。
イセリアとは正反対の東洋風の建物。
方士の一族サガラの東一条殿だ。
「ここがサガラ…」
「ニッポン、みたいだね」
西洋建築のような高さも華やかさもなく、平べったい建物が特に主張もせずべったりと座っているようだ。
五人は入ってすぐ居間に通された。
と、そこへ待ってましたとばかりに子供が群がってきた。
「おねぇちゃんたちだぁれー?」
「カガミ兄のともだちー?」
「うーん、友達ていうか…」
困ったようにマリクが首を傾げる。
友達、というか知り合いと言うか。
困っていると、手早く着替えをすませたカガミが現れる。
黒から藤色の普段着に着替えた彼は、いくらかくつろいだ雰囲気で子供の頭をぽんと叩いた。
「お客さんだよ。いい子にしろ」
「いいこだもーん」
「いいこだよねー」
「いい子は障子を破ったりしません。ほら向こう行ってろ。ミズホ、あと頼むぞ」
「はいはーい」
カガミが子供を急かして部屋を出ると、入れ違いに少女が飲み物を持って現れた。
榛色の髪をつむじあたりに結い上げて、桜色の着物をまとっている。
人なつこそうな笑顔に誰もが好感を覚えた。
「はじめまして。ミズホ=リナです」
「あ、マリク=タリアです」
「シンディ=ローズでーす」
丁寧に頭を下げて挨拶する。
軽い調子で返事をしたシンディを、リアルが軽くこづいた。
「何よ」
「普通はちゃんと挨拶返すもんだろ」
「自分してない癖にー!!」
「俺は初めましてじゃないんだよ!!」
もはや反射で喧嘩を始めた二人の頭をマリクが何も言わずにはたく。
驚いて振り返れば「目の前で失礼だよ」とたしなめられた。
「仲がいいんだね」
にこにこと笑いながらリアルの前に飲み物を出す。
他の人のはすでに並べてあった。