一人っちになったんじゃない








――俺がいる!!


小さな雛鳥は翼を広げようとした。





中学、最初で最後の大会で一目惚れをした。
その人は少し青みのかかった黒髪に整った顔立ち、羨ましいほどの身長と才能を持っていた。

周りがぽつぽつと会話していた言葉の内容に"天才セッター"、"コート上の王様"というのが聞こえすぐに理解をした。
目の前にいる一目惚れをした彼は俺とは別次元の人物なのだと。
きっと彼にはそう言われるような特別な何かを持っているのだ、だから俺みたいな奴が彼と並ぼうなんて到底無理なのだと、どこか諦めていた。

だから、まさかそんな彼と今や墜ちた強豪と言われている高校で一緒になるなど思っていなかった。

俺、日向翔陽は現在形で影山飛雄に恋をしていた。



だが、そんな影山とは初っぱなから喧嘩をし体育館を出禁となってしまった。


「…あーあ、バレーできると思ってたのに…」

ぽつりと呟いた言葉は誰も返してくれることなく空気へと消えていった。
すぐそこには一目惚れをした相手がいるが彼は思った以上の口の悪さや横暴さを発揮していた。

「なあ、影山ー」
「……」
(無視かよっ!!)

せっかく会えたのに…確かにあの時は負けて悔しかったけど!!影山みたいに上手くはなかったけど!!!

(無視しなくてもいーじゃん……)

会いたい、戦いたい、勝ちたい…そう思っていた相手が目の前にいる。初めて一目惚れをした相手が目の前にいるのに、その彼は自分が目に入らないかのように振る舞う。

「……おい」
「っな、何だよ!!?」

いきなり話しかけられるなんて思ってなかった―
だけど、話しかけてくれて嬉しかった。
顔がにやつくことを必死に抑えようとする。
彼からどんな話を振ってくれるのか、どんな風に笑うのか、何を話してくれるのか…思わずにやつくのを抑えられない。


だけど


「お前とは…」


彼の口から


「仲間になるつもりなんてない」


とても残酷で聞きたくない言葉が言われた。







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