gift

□Bitter Chocolate
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「はぁ〜…寒い…」

小さな唇の透き間から白い息が漏れる。

「そうだね。」

両手を擦り合わせて手を少しでも温めようとしている幼馴染。

「そうだねって…シゲル、マフラーしてないじゃん。」

コートだけで手袋をしているぐらいだ。

「僕はそこまで寒がりな方じゃないからね。」

「あっそ」

短い言葉で返す。

「………。」

「…………。」

しばらくの沈黙が流れ、シゲルが押している自転車の

カラカラカラとタイヤの回る音が聞こえるだけだ。

「そういえば、もう少しでバレンタインだね。」

君は誰かに本命をあげたりするのかな?

「……そうだな!!」

「…誰かに…あげたり…するの?」

恐る恐る聞くと、驚いた表情をしたが

顔を赤くし小さく頷いた。

「……そっか…

誰にあげるんだい…?」

それが僕にだったらどれだけ嬉しいことだろうか。

だけど、流石に僕でもそこまで自意識過剰ではない。

「……秘密だ。

でも……カッコよくて…優しい人なんだ…」

顔を赤らめながら、でも幸せそうに微笑んでいる。

今まで一緒に居たけど、一度も君のそんな顔は見たことがなかった。

こんなことを言うのもあれだけど

バレンタインの日が来てほしくない、

僕はそう思ってしまった。


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