gift

□走ってゆくことができたなら
2ページ/3ページ

ピカチュウは数日前までのことを思い出してみた。

まだ、そこにはサトシの姿があって

いつものように笑っている君の姿があって…


そこで僕の思考は止まった。

あの笑顔は本当の笑顔だったのだろうか?

僕たちが元気に広場を遊んでいたときに

君は木陰で、じっと僕たちを見つめていた。

僕は君に笑顔を向けた。

君もいつものように笑って…


違う、君は小さく微笑んだだけで

その顔は悲しそうじゃなかったか―?

その他にも思い出せば

いくつも悲しそうに笑った君の姿を思いだせる。

僕が気づかなかっただけで…


あの時、悲しそうに笑っている君のところに

走ってゆくことができたなら

もう少し、未来は違ったのかもしれない。

『ピカピ…』

何度、君の名前を呼んでも

『ピカ…ピ』

君は答えてくれない。

『ピーカ…ピカ』

君はどこへ行ってしまったの?

『チュゥ〜…』

僕も君の傍に行きたいよ。

『ピカピィィィ』

叫んでも、叫んでも

『ピカ…ピカピィィィッ!!!!』

君は戻ってきてくれない。

『ピカ…ピカピカ…ピカピ…』

やがて声も出なくなってきた。

掠れたような声で僕はもう一度

『ピカピ…』

サトシって呼んだ。


走ってゆくことができたなら(未来は違ったのかな)


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ