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□元気な君と
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眩しい光と心地よい暖かさに目を覚ました。

白い天井に薬品の匂いが微かにする。遠くから慌しい足音とジョーイさんの声。
此処が一目でポケモンセンターだって事を示している。

だが自分が何故、此処で横になってるのかは分からない。
相棒のピカチュウも、旅の仲間のヒカリとタケシもいない。

起き上がろうとすると頭に強い痛みと喉を焼き尽くしそうなヒリヒリとした痛みに不思議に思った。
その痛みに眉を寄せているとドアがノックされた。
顔を出したのはヒカリで、手にはお盆を持っている。

「サトシ!気がついたのねっ」

ヒカリはお盆を持った片手でドアを閉めサトシのベットに近寄る。
側にあった椅子に腰掛、お盆をベットの隣にある机に置いた。

「大丈夫?いきなり倒れるんだから心配したのよ。」
「・・・・だおでだ?(倒れた?)」
「・・・・・・・もう、声ガラガラじゃない。ほら、ちゃんと寝てないと。」

ヒカリはサトシに横になるように言うと布団を肩まで被せてくれた。

「サトシはこの近くの坂道で倒れたのよ。覚えてない?」






数分前の出来事――

いつものように次の町を目指していたサトシ達。
だが、いつもとは明らかに違うサトシの様子に不自然に思ったピカチュウ、ヒカリ、タケシ。
いつも元気で一番先頭を歩くサトシなのだが今はヒカリ達と距離がある後ろを歩いていた。
その足取りは覚束なくふらふらしている。
視点も定まらず、ボーっとしている瞳。熱を帯びたように赤くなっている頬。
全てが不自然なのだ。

『ピカピ?ピカチュウ??』

ピカチュウが心配そうな瞳で聞いてくる。
その質問に笑みで「大丈夫だ。」と答えるサトシ。
だが、その笑みは何処からどう見ても苦しそうで無理しているような笑みだ。
額には汗を垂らし急な坂でもないのに辛そうに歩いている。

「サトシ、今日はどうしたんだ?」
「そうよっ。いつも元気なサトシがこんなに元気ないなんて・・・・ちょっと以上におかしいわ!!」

タケシもヒカリもサトシの様子に不自然に思い歩幅を合わせる。
そうすると自然に隣を歩く形へとなった。

「辛いなら少し休むか?無理も良くないしな。」
『ピカピ・・・・・・』
「だい・・・・じょうぶ・・・・・だって・・・・・・・」

それを言うのも辛そうだった。
だが、その瞬間サトシの体が後ろに傾いた。
それを慌てて支えるタケシ。だがサトシの意識は既になく額に手を当てると凄い熱だって事に気がついた。
タケシはリュックをヒカリに頼みサトシを背中におんぶして走って近くの此処のポケモンセンターに運んだのだった。






「大体こんな感じかしら?
はい、サトシ。体温計。体温を測って。」

ヒカリに手渡されたのはデジタル式の体温計。
ボタンを押し脇に挟む。
挟む事1分間。
ピピピ・・・・という電子音が鳴り響き体温計を取り出す。
そこに示されている電子数字は「39.3度」熱は下がるどころか上がる一方だった。
ヒカリは呆れたような長い溜息を一つ吐き椅子に座りなおした。

「サトシは無茶しすぎなのよ。ジョーイさんが言うには流行り風邪と無茶などから来る風邪だろうだって。」
「・・・・・・・・。」
「無茶しないでたまには仲間のあたし達にも頼ってよ。」
「・・・・・・・・・・ごめん。」
「・・・・・・今日はゆっくり休んでね。ポケモンたちの事は心配しなくても大丈夫!!」
「・・・・ありがどう。」

暖かい日差しが窓から降り注ぐ。
その暖かさが心地よくだんだんと眠気が襲う。

明日は、
元気な君と旅が出来るといいな。

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