長編作成
□You Loved The World
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プロローグ 少女は消えた
爆音と悲鳴の声が平和だった湖を地獄へと変えた。
爆発で巻き込まれた小さな子供が泣いていて「痛いよ…」と繰り返していた。それなのに俺はその子を助けることができず地面に倒れていて――
血を流しすぎて意識が朦朧とし、霞む視界には怪我をして地に伏せているポケモンたちの姿があった。
「ぴ……か、ちゅ…」
掠れた声で相棒の名前を呼ぶが元気な声も姿も見せてはくれない。その相棒も瀕死状態で早く手当てしないと死んでしまう…なのに俺の体は動かない。
俺の目の前で二人の足が止まった。二人の胸にはでかでかとRとGが描かれていてそいつらが誰かはすぐに分かった。
(こいつらのせいで…いや、違う。)
俺のせいだ。俺が生きてるせいで関係ない人たちまでも巻き込んだ。狙われていることに気付いてたのだからもっと早くに対応できたはずだ。なのにしなかったのはきっと自分の甘さからだろう。シゲル達の傍にいたいって願ったから、光輝いているこの世界にいたいって願ったからこんなことになってしまったんだ―
そう、全て、自分のせいだ。
「早くその餓鬼を連れていけっ」
こいつらに捕まるぐらいなら死―…
「ぐあっ?!」
「やめなさい、それ以上したら手加減しないわ」
「……」
ぼやける視界に入ったのは眩しいぐらいの金髪の女性の姿。
(シロナさん……)
「ガブリアス、流星群!」
シロナさんが相棒のガブリアスに指示を出すとしたっぱたちは舌打ちをし逃げ去った。チャンピオンの座は譲ったが歴代最強と言わしめた強さは健在している。したっぱが敵うはずがない。
「サトシちゃん!!」
シロナは敵が完璧に去ったのを見届け倒れているサトシを抱き抱えた。
だけど、サトシは意識が朦朧とし呼吸も弱い。慌ててシロナは病院を手配し、救急車が来るまでずっと呼び掛けた。
(でもね……シロナさん、俺は死んだほうがいいんだよ……)
生きてては駄目なんだよ――
サトシはそこで意識を失った。
あの時に俺が死んでたら誰にも迷惑をかけずにすんだのに、それが出来なかったのは自分の甘さが原因だ。
そしたら誰にも疑われなかったのに、嫌われなかったのに―
悲しまないですんだのに――
少女は消えた
(さよなら、愛した世界と仲間たち)
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