短編作成

□君を想う
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窓側の席の君

「であるからして――」

つまらない授業が淡々と進む。

学年でも学校でもトップである自分にとって

とってもつまらない時間だ。

カッカッカッというチョークの音。

教科書を立てて机に突っ伏して寝る者もいる。

シゲルは特にすることもなく

ぼんやりと窓の外を見る。

空は青く夏の雲って感じだ。

(つまらない…)

こんな風に授業の時間をつまらないと思うようになったのは

中学校の時からだった。

授業を真面目に聞いていなくても

成績に支障はないし、生徒会の仕事も一生懸命で努力家

先生達からの評価もいい。

クラスメイトからの信頼度も飛びぬけていい。

特に何かに困るってことはない。

ただ本当の友達、っていうのが存在しないだけ。

唯一仲の良いのはサボり仲間のシンジぐらいで。

シンジもシンジで成績は優秀だが

一匹狼って感じだ。

だから親近感を持てた。

(後45分…)

チラリとみた時計はさっきから一向に進んでいない。

クラス観察、でもしようか…とどうでもいいことを考えた。

まぁ、喋ったことがない子はいない…と思ってた。

だけど違った。

(あれ、あの子と喋ったことあるっけ?)

窓辺に座る女子生徒。

特に真面目に先生の話を聞いているわけではなく

ずっとシゲルと同じように窓の外を眺めている。

肩まで伸びている少し跳ねている黒い髪の毛。

シャーペンを持つ華奢な腕に指。

記憶を辿っても喋った記憶は一つもない。

というより、居たかも分からない。

(あぁ。そういえば、退院した子がいるって聞いたな。)

もしかしたら、それがこの子なんだろうか。


窓側の席の君(喋ってみたいと思った)




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