短編作成
□悪夢と希望
1ページ/3ページ
目の前には幼馴染でライバルの姿。
帽子で顔が隠れて表情は見えないけど、ずっと俯いたまま。
風が吹き僕と君の髪が靡く。
君の表情を隠していた赤の帽子が飛んでいった。
それでも何もしない君に少し疑問に思った。
いつもなら煩いぐらいに元気で明るいのに
今の君はいつもの君ではないようだ。
「…サトシ、どうしたの?」
僕はいつものように幼馴染に問いかけた。
だけど君は何も言わない。
僕が一歩近づいた瞬間、顔を上げた。
僕は目を疑い思考がストップする。
その表情は悲しげで、なのに微笑んでいる。
僕は息を呑んだ。
その瞬間
君の身体が後ろに傾いた。
僕は慌てて地を蹴った。
「っサトシ!!!」
君の名前を呼んで
君の手を掴もうと
君を抱きしめようと
僕はサトシに手を伸ばした。
でも、君と僕の指が微かに触れただけで
掴むことは出来ずに君の身体は羽がない鳥のように落ちていった。
最後に君が微かに開いた口から聞こえた言葉が
僕の頭の中に残っていた。
さ よ な ら
だ い す き だ っ た よ 。
.