短編作成

□知らない”笑顔”
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今、あたしの目の前で微笑んでいるのは誰?

頬に返り血が付いて、

冷たい瞳で死骸を見つめているのは誰?

”かあいそうに。生まれて間もないのに殺されるなんてな。”

そう言って微笑んでいるアナタは誰?

隣を見ればタケシも唖然としていた。

”どうしたんだよ?二人とも・・・そんなに驚いてさ。”

アナタハダレ?

あたしが知っているアナタは太陽のように暖かな笑顔。

あたしが知っているアナタは近くに居る人も幸せになれるような笑顔。

あたしが知っているアナタは――・・・・

”ヒカリ?どうしたんだよ、そんなに固まって。”

アナタハダレ?

あたしもタケシも知らない笑顔。

あたしもタケシも見たことのない笑顔。

アナタハダレ?

”・・・・ヒカリ。”

血で汚れたアナタの右手があたしに向かって伸びてくる。

”い、いやぁぁ!!!!近寄らないでっっあたしはアナタなんて知らない!サトシじゃないっっ!!!!!!”

これはアナタの全てを否定した。

アナタはこんな笑顔で笑わない。

あたしの目に映るのは全て夢だ。

現実じゃない。

あなたもホントの笑顔で”あはは。驚いたか?”って言ってくれるはずだ。

そうあたしは信じていた。

だけど――

”嘘じゃないよ。コレがホントの俺の笑顔。今までのが偽りだ。”

そう言って動けないあたしに近づき

真っ赤な血で染められた右手であたしの頬を触る。

ヌルリ・・・とした気持ちの悪い感触。

ぞくりと背筋が凍るのがわかる。

”俺のホントの笑顔だ”

違う・・・・・

”今までのが偽りだ”

違う・・・

アナタの言葉が頭の中でぐるぐる回り目に映る全てのものがぐるり、ぐるりと回転する。

”お前らが知らない笑顔”

最後の言葉はあたし達を深い絶望と悲しみが残り暗闇に意識が落ちていった。

目を覚ましたときはアナタの姿はもう、なかった。

アナタは何故、あたし達にホントの”笑顔”を見せたのだろうか?

アナタはあたし達に何を求めていたのだろうか?

もしかしたらアナタは助けを求めていたのかもしれない。

それに気づくことが出来なかったあたし達。

アナタは怨んでいるのだろうか?

それとも悲しんでいるのだろうか?

アナタは今、何を望んであたし達から姿を消したのだろうか?

それも今では分からない。



あたし達の知らない”笑顔”
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