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□星空ユニゾン
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てとらぽっど あすらん 様



【星空ユニゾン】






「何を見てるの?サトシ」

「あ、アイリス」



自然の光だけが空を照らす、真っ黒な闇。

サトシと、そしてピカチュウは、広い広い星空をその瞳に映していた。

言葉を交わす訳でもなく、ただただ夜空の光を眺める二人を不思議に思ってか、彼等へとアイリスが声をかける。



「空が綺麗だと思ってさ」

「あ、本当ね!」



アイリスもまた、サトシの横に腰を下ろし、称讃の言葉を星空へと投げかける。

澄んだ空に、きらり輝く夢の星。

三人に促されるように空を見上げたデントは、突然「あ!」と声を洩らし、その指で星空を示した。



「あれ、流れ星!」

「え!?どこ、どこ!?」



しかし、デントが手を伸ばした時には既に流れ星はその姿を消していて。

身を乗り出して星を探すサトシに対して、少し困ったような笑顔を返す。



「もう、見えなくなっちゃったよ」

「本当に、サトシったら子供ね!

最強のポケモントレーナーになりたい、とかお願いしようとしてたんでしょ!」

「そりゃあ、なりたいけど……」



肩をすくめるアイリスに、サトシは口を尖らせる。



そうして、サトシ達の話を夜風に耳を揺らしながら聞いていたピカチュウだったが、ふと、視界に彼等の姿を捉えて。

話を続けるサトシを横目に見ながら、ピカチュウは彼等の後を追うことにした。



ーーー



『……ケンホロウ引き連れて、どこ行くの?ミジュマル』

『わわっ!』



背後からの声に、ミジュマルはびくりと肩を飛び上がらせる。

驚きに目を見開いたミジュマルが後ろを振り返れば、そこにいたのは同じ仲間のピカチュウだ。

走る心臓を落ち着かせるように一息吐いて、ミジュマルは改めてピカチュウと向き合った。



『なんだ、ピカチュウかあ……。びっくりさせないでよ』



そう言って浮かべられた笑みは、何やら誤魔化すように貼り付けられていて。

ピカチュウに、あまり知られたくないことがある様子だ。



『急にいなくなっちゃったら、サトシ、心配するよ?』

『え、ええと、それは……』



視線を泳がせながらも、どうにか話を流そうとするが、根が正直者なミジュマルにはその行動は寧ろ逆効果である。

徐々に悪くなっていく雰囲気に、仕方ない、とケンホロウが口を挟む。



『そう怒らないであげて、ピカチュウ。

ミジュマルは星を取りに行きたかったのですよ』

『星を、取る?』



ミジュマルに目をやると、ミジュマルは滝のように汗を流して首を縦に振った。

どうやら、ケンホロウの言ったことは確からしい。

星を取る、その言葉の意味に頭を悩ませ、暫くしてからピカチュウは、『分かった』と小さく呟いた。



『よし、僕も行く。手伝うよ、ミジュマル』



予想しなかったピカチュウの返事に、ミジュマルは今度こそ、安堵に満ちた笑みを浮かべる。



星空の小さな探検隊は、ここに結成されたのであった。






……とは言っても。



『危ないよ!ミジュマル!』

『あと、もうちょっと!』



ケンホロウの背に乗った遠い空の上、ミジュマルは精一杯、その小さな腕を星に向かって伸ばしていた。

危なっかしいミジュマルの様子に、落ちてしまうのはミジュマルの方なのではないかと、ピカチュウは気が気でない。



『うわあっ!』

『ミジュマル!』



ピカチュウの嫌な予感は的中し、足を滑らしたミジュマルがケンホロウの上から投げ出される。

遥か下にある真っ暗な地面、重力に逆らわずして落ちていく身体。

辛うじてピカチュウがミジュマルの腕を掴み、ケンホロウの背中へと彼を引き戻した。



『もー……危険なことは止めてよね、ミジュマル』

『きっと、多分、もうちょっとなんだ……』



未だに諦める気配のないミジュマルは己の手を見つめ、震える言葉を零した。



『すぐそこにあるのに、届かないのはどうしてなんだろ……』

『ミジュマル……』



ミジュマルの溜め息の音を聞きながら、ピカチュウはちらりと足下の夜空を見た。

自分達がやって来た地面には、人々が暮らす光が輝いている。

星のように、輝いている。

もしかしたら、星からしたら僕達の方が星に見えるのかもしれない、とピカチュウは意味もなく思った。



『どうして、ミジュマルは星を取りたかったの?』



ミジュマルは、更に上にある星空を見上げ、どうやっても届きそうにない星へと、それでも手を伸ばす。



『さっき、サトシ達が話してたから!

星は夢を叶えてくれるんだって!

願い事、たくさんあるし……それに、サトシも夢を叶えたいだろうから……』



小さく呟かれた最後の言葉を、ピカチュウのよく聞こえる耳はしっかりと聞き取って。

ピカチュウは、僅かに頬を緩めた。



『……よし。じゃあ、ミジュマル!

今度は僕の手助けをしてよ!』

『え?手助け?』

『うん。空に向かって“ハイドロポンプ”を放ってほしいんだ!』



ピカチュウの頼みに、ミジュマルはこくりと一つ頷いた。

今度は慎重に、ケンホロウの上で立ち上がる。



『分かったよ!“ハイドロポンプ”!』



ミジュマルの“ハイドロポンプ”が、直線を描いて空へと向かう。

現れた水の柱に、ピカチュウもまた、己の力をぶつける。



『”10まんボルト“!』



その水の形に沿うように、電気が水の上を走っていく。

”ハイドロポンプ”をピカチュウの電気が完全に包む頃には、すっかり水はその元の輝きの色を変えていた。



『うわあ、綺麗!』



真っ直ぐに伸びた光が、夜空に浮かぶ。

きらきらと輝きながら、空へ地面へ光を散らしていく。

光の矢のように夜空を駆ける、その姿は。



それは、まるで、流星のように。



ーーー



「ピカチュウ、ミジュマル、ケンホロウ!

一体、お前達どこ行ってたんだよ!」



帰って来た探検隊を待っていたのは、サトシのそんな言葉だった。

ピカチュウが必死に謝る素振りをすれば、膨れっ面だったサトシも少し肩の力を抜いて、その笑顔を見せるようになる。



「そういや、さっき流れ星落ちたけど、見てたか!?

すげー綺麗だったぜ!」



嬉しそうに先刻の流れ星の話をするサトシに、こっそりとその探検隊は目を合わせ、小さく笑った。



『ピカピ、ピッカ、チュ?』

「え?俺がお願いしたこと?

俺の夢はなあ……」






ーーー命の数だけ願い事。

ーーー星の数だけ願い星。

どうか、この楽しい日々が長く続きますように。







フリーということで、あすらん様のサイトから頂いてきました。
ミジュマルが可愛すぎて…ヤバイですねっ!!!
サトシのことを大好きなことが分かる物語ですねっ
ふふ…嬉しすぎてニヤけてしまいますw
あすらん様!快くお持ち帰りをご了承を下さってありがとうございます。
一生大切にします。
遅くなりましたが二周年おめでとうございます。



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