短編作成

□君を想う
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許さないよ?

「それでぇーシゲル君、話ってなぁに?」

頬を赤く染めながら聞く二人の女子生徒。

夕暮れの時間で教室はオレンジ色に染まっている。

「もしかして…告白とか??」

自分勝手に言ってきゃーっ!!と声を上げる。

本当に煩い…

そんな事を思っても言葉にはしないで胸の中だけに留めた。

「…僕達の邪魔をしないでくれるかな?」

出来るだけ笑顔でいつもの口調で言うが顔は笑っていない。

上面だけの笑顔。

「…何のことか、分からないんだけどぉー」

「知ってるんだよ。君達がサトシを転ばせたの。

色んな人からの目撃情報が上がってるからね。」

そうそう、写真もあるんだよ。見る?

と、付け足すと女子生徒は顔を青くさせる。

「……。」

「これ以上、サトシを泣かせたりしたら…」


僕は君達を許さないよ?



「…っそんなに、あんな奴が大切なの?!!」

女子生徒の一人は僕に向かって涙目で言ってくる。

「シゲル君を好きになったのは、こっちが早いのに…!!なんで…っ」

「君達が僕を好きになったのが早くても

僕は君達を好きじゃなかったのに気づかなかったのかい?」


本当におめでたい頭をしているね。



「……っいいわ!!わたしを振ったこと…


後悔させてあげるんだからっ!!!!!!!!!」

「後悔も何も…僕は最初から君を好きだなんて言ってもないし

告られてもないんだけど…」

「、っ」

「とりあえず…僕に仕返しはしてもいいけど…

サトシだけは傷つかせたりしたら

僕は君を一生許さないからね。

それだけは肝に銘じてね?」

それだけを言い残し教室を出て行く。

後ろから少女達の怒声や涙声の声が聞こえてくる。

静かな廊下には僕の足音だけが響いている。

(サトシは帰ったかな…それとも、もしかしたら…)


僕を待っていてくれるてるかな…


そんな期待を持ちながら、あの秘密の花園へと足を向けた。






「サトシ…?」

白いテーブルに突っ伏している女子生徒の後姿。

「…あ、シゲル。」

「…もしかして…待ってたのかい?」

「…まぁ、な……迷惑だったか?」

上目遣いで見上げてくる姿に思わず胸が高鳴る。

「いや…!!そんなわけないだろう?!!

むしろ嬉しいっていうか…」

「…へ?」

「〜〜〜〜〜っ」

自分は今なんて言っただろうか?

思わず思っていたことを口に出してしまい

サトシには変な目で見られてるし…

あぁー!!!もうっ…

「…ぷっ…変なシゲル。あはは」

「……笑わないでくれないかな?」

「だって…はは…めっちゃ顔赤いぜ?」

「〜〜〜っそれは言わないでくれ!!!」

「あはははっ!!!!」

思いっきり笑う君の姿。

それは眩しくて、夕暮れの日差しが君の笑顔を

さらに輝かせている。

「……帰ろうか。」

「あぁ…」

「送っていくよ。」

「えー…いいよ、家遠いだろうし」

「だーめ。女の子を送っていくのは男の役目なんだから。

家はどこだい?」

「うーん…ならお言葉に甘えるよ。

家はマサラ3丁目。」

「…へっ?」

今度はシゲルが不思議そうな驚いたような表情をする。

「……なんだよ…」

「サトシ…君ってマサラ3丁目なのかい?!」

「う、うん…そうだけど?」

「奇遇だね。僕はマサラ2丁目だよ。」

「え?!!滅茶苦茶、近所じゃん!!」

「これも何かの運命なのかもね。

これからは一緒に帰れるし、君も嬉しいだろう?」

と、ニヤッと笑う。

「いや、別に嬉しくないかなー」

「嘘だー僕を待っていたくせに。」

「それは言うなっ」

「照れてる?」

「照れてない!!!!」

二人の笑い声と話し声。

オレンジ色の空の下、サトシとシゲルは二人並んで帰った。
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