短編作成

□君を想う
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頑張る君

「ねぇ最近シゲル君と一緒にいる子って…ねぇ?」

「えー全然可愛いくないじゃない!!」

「何でシゲル君は…」

「ずっと入院してたら良かったのに。」

シゲルがサトシに話しかけてからよく耳にする言葉だった。

シゲルはそれを涼しい顔をしているが

サトシは傷ついたような顔をしていて

シゲルはどうにかしないと…と考えていた。

特に「ずっと入院してたら…」という部分では泣きそうに顔を歪めている。

だけど泣かない。

ずっと堪えている。

(ホントに早く手を打たないとな…)

僕はそう思いながら会話が聞こえてきた方に背を向け

階段を下りていく。

きっとサトシはあそこにいるだろう。

あの場所が僕とサトシの秘密の場所――



「あ、やっぱり此処にいたんだね。」

「シゲルか…」

僕が来た瞬間嫌そうな顔をする女子生徒。

ノートや参考書を広げている。

きっと苦手な数学でも解いている最中なんだろう。

「分かんないところない?

教えれる範囲教えるよ。」

「あぁ、ありがとうな。

じゃあさ此処ってどうやって解くんだ?」

「此処はね…xを――」

じっくりと説明すると君は笑顔で「なるほど!!」と言って問題を解いていく。

元々飲み込みがいいから少しアドバイスとかすれば

ほぼ一人で出来るし、普通の女子とは違い

僕に「わかんなーい、シゲル君。此処ってどうするの?」

とか言ってきて長時間付き合わせようとはしない。

「…シゲルはいいのかよ。」

「何が?」

「だから…ほら、他の女子とか…さ」

「………。」

「別に、俺の勉強とかに付き合わなくてもいいんだぜ?

俺は一人でも大丈夫だし…さ」

そう言って表情が少し曇る。

「そんなに気を使わなくてもいいよ。

僕はあの子たち好きじゃないし、

サトシと一緒の方が楽だしね。」

そう言うと顔を赤くするのがとても可愛いくて

「あ、赤くなってる。サートシちゃん?」

と言うと

ノートで叩かれて「”ちゃん”を付けるな!!」と怒られる。

それがとても新鮮で

僕の今までのつまらない学校生活が嘘かように思えてくる。

「それにこの場所も気に入ってるしね。」

そう、この場所は僕とサトシが二人で居れる最高の場所だ。

校舎から離れていて誰も知らない場所。

昔、園芸部があったときに使われていた場所らしい。

白いテーブルと椅子。

大きな木々が日差しを避けてくれるから

結構涼しいし、サトシの提案で花とかを植えたら

そこは見違えるほど綺麗な場所となった。

秘密の花園って感じで。

そしてサトシもこの場所を気に入ってるのだろう。

勉強とか放課後…何か嫌なことがあったら

度々此処に訪れているのを僕は知っている。

そして花や木々に水をやって大切に育てていることも。

いつの間にか此処は僕達だけの空間になっていた。

サトシの入院していた分の勉強を僕は此処で教えている。

教室だと他の女子に邪魔をされて迷惑だから。

「そういえば、サトシ。」

「ん―…?」

「この前さ、大量の荷物持っていたよね。」

「……知らないぜ?」

「ぷっ…何、その間。」

「知らないってば…」

「隠しても無駄だよ。僕はきっちりと見ましたー」

先生に頼まれて嫌とは言えず手伝う君の姿。

君は本当に何でも一生懸命で頑張りやで

とても好感を持てた。

「……。」

「君が足を滑らしてプリントを落として先生に怒られたこと…」

あれ…

ちょっと待てよ…

「シゲル…そんなの黙って見てたのかよっ?!!」

「……。」

「シゲル?」

何で、あそこでサトシは足を滑らした?

普通あそこは滑りが悪い場所だ。

何かを塗ったとしか…

ガタっと椅子を鳴らし立ち上がる。

「…シゲル?」

「あー…ごめん用事思い出した。

僕は先に教室に行ってるね。」

「あ、うん…」

「また放課後にね。」

そう言って荷物をまとめて出て行く。

あぁ、わかった。

そろそろ僕も





本気を出さないとだね。


頑張る君(僕もそろそろ本気を出そう)
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