短編作成

□会いたくて、会いたくて
4ページ/6ページ

次に目が覚めた場所はポケモンセンターの一室だった。

白い天井に独特な薬品の匂い。

純白なベットの上で目を覚ました。

周りにはデントとアイリス。

その目は泣き腫らしたかのように真っ赤で見てるこっちが痛々しかった。

「…サトシっ!!!」

「馬鹿っ、ホンット子供なんだから…っ!!」

ギュッと抱きついてくるアイリス。

それを受け止めるほど俺には力がなかった。

ただ、後ろに倒れないだけの力しかなかった。

「……サトシ?」

「…、っぅ」

「サトシ…っ!!!」

「しん、じ…シンジ…っ」

何度も何度も繰り返される名前。

アイリスとデントが名前を呼んでも答えてはくれず、ただ同じ名前を呼び続けた。


「シンジぃぃぃっ」


会えない辛さが寂しくて

聞けない声が悲しくて

近くに居ないことが、とてもとても辛い。


「…サトシ」


近くで聞こえた懐かしい声。

「しん……じ?」

「何だ。」

「……ぇ、本物?」

「…偽者なんか居るもの。ヌルイ奴。」

俺に口癖のように言った言葉。

「…お前が、おかしいって…そいつ等から聞いた。」

「……。」

「…何が、あった。」

無愛想でも優しくて、言葉は足りないけどその言葉には思いがある。

シンジの服を握り締め、胸のところに額を押し付ける。


「…シンジ、もう一度聞かせて。」


( も う 一 度 聞 か せ て )


「今はそうじゃなくても、嘘でも良いから…」


( 嘘 で も )


「あの日、言った言葉を…」


( あ の 日 の よ う に )


「好きだ、」







( 好 き だ よ っ て ― )








.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ