ウルトラマン闘牙

□第4話「灼熱の街」
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東京近郊。
WDF日本支部所属特捜チーム、通称JET。ここでは日夜、防衛軍のエリート達が怪事件の解決に全力であたっている。今日も…そのはずだった。
「あづ〜」
肩幅と上腕二等筋が大きな男、サガミは机に突っ伏し団扇で自身に風を送りながらいった。首にかけているタオルは傍目にも時化っている。
「お前さっきからそれしか言ってないぞ」
隣の椅子に座っているすらりとした長身の男、ソウマは資料の整理をしている手を止めて叱咤した。
「こ〜暑くたぁ、なんもでけねぇ」
「何だって?」
「キミ、ニホンゴワカリマスカ?アツイッタラ、アツインダヨ」
「…外人に失礼だぞ」
そこへ自動ドアから紙コップを3つ持ったナガイが現れた。
「まあまあ二人共、余計暑くなることはそれくらいにして。コレ飲んで頭冷やして下さい」
そう言ってそれぞれの机に紙コップを置く。紙コップからは煎りたてのコーヒー豆の匂いがして、水面には氷が浮いている。
「お前いいのか、コレ?」
ソウマは紙コップを指さして言った。JETも水不足のため、水は個人に決められた量が配給されているのだ。
「困った時はお互い様。それに僕、結構節約して使ってるんで」
「お前、お前ってヤツは…」
サガミは感極まった声で言うと一二もなく紙コップを口に運んだ。ソウマも匂いを味わいながら喉を鳴らす。
「ゲ〜、しょっぱ!!」
「んぐっ、マズ!!」
ナガイは二人に一瞬遅れてゴクンと飲み干した。やがて涙目になる。
「…しょっぱい」
困った3人を見て、隊長とユリは呆れていた。
「まったく、サガミ隊員もナガイも情けないわね」
そう言いながらユリはハンカチで頬を拭いた。
「みんな何だかんだで暑いんだろ?」
サガミは非難がましく周りを見た。
「夏、いや暑さバテもここまでくると漫才だな」
隊長はため息混じりにそう言うと、組んでいた腕を外して立つと大きく伸びをした。
「確かに暑い、まるで蒸し風呂の中にいるようだ…だがなサガミ、ナガイ。苦しくてもそれを凌駕する精神力があればカバー出来るぞ」
隊長はそう言うとナガイとサガミの隣に立って二人の肩を叩いた。
「そうですね、気力だ。気力なんだ!!暑くない、暑くない、暑くない」
ナガイは何かを猛烈に理解したようで、バネがイカれたからくり人形のようにぶつぶつと同じ言葉を言い始めた。
「…ナガイ、余計暑くなる。今日は休んでろ」
ソウマは諭すように言いながらナガイを椅子に座らせた。
「でも、本当にこのままじゃ頭がおかしくなっちゃうわ。…あっ!!」
ユリはパソコンのディスプレイを見て言った。
「隊長!地下3万kmに高速で移動する熱源を発見しました。今拡大します」
ユリがキーボードを叩くとメインモニターに地底を移動する赤く点滅する光点が映しだされた。
「よし、睨んだ通りだ。サガミ、ソウマ!!」
「はい!」「…へ〜い」
ソウマがきびきびした動作をする隣で、サガミはかろうじて起立を保っていた。
「何だそのやる気の無い態度は!!この程度の暑さでへばるな、情けない」
「隊長のやる気がありすぎるんですよ」
「馬鹿者!この間にも多くの命が危険に晒されているんだ。さっさとマグノックスで出撃しろ!!」
サガミは思い切りどつかれ、ヤジロベエのように振動した。
「了解しました〜!!」
ソウマは"先が思いやられるよ"と言い残し、逃げるように駆け出すサガミの後ろを着いていった。
二人は作戦室を後にするとヘルメットを装着していつもの通路を駆け足で進んでいく。そして、通路の突き当たりにあるエレベーターに乗り込むと、カードキーの代わりに腕の携帯用通信機をかざした。それに応えるようにエレベーターは動きだして、滑るように地下に降りていく。
瞬きを幾つもしない内に扉は開き、JET基地最深ドッグに到達した。エレベーターの窓から覗く風景には、黄色に少しオレンジを入れて白を混ぜたような照明に照らされていくつもの重装甲戦闘機が並んでいるのが見える。
少し進んで一つ扉を潜ると、もうそこはコクピットの中だ。機体の表面に埋め込まれた特殊カメラから送られる外界の映像が、自動でカバーが開いたコクピットの大型モニターに写し出される。二人は操縦席に座ってシステムを起動させると、機体のチェックを済ませた。
「オープンゲート、スタンバイ」
ソウマがボタンを押すとドック内に警報が鳴り響き、遥か彼方まで伸びた地下トンネルへ続く巨大なゲートが開いた。
「システムオールグリーン、マグノックス発進!」
力が集束されていくようにエンジン音が高まり、それに合わせて巨大な物を動かす振動が始まる。サガミがレバーを手前に押すと、巨大なキャタピラが勢い良く動き始めた。
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