ウルトラマン闘牙

□第3話「甦る古代」
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それでも車は止まらず、神社の本殿に向かっていく。
「曲がれ!!」
ガガ…
その時、やっとハンドルが効いて軌道が左に逸れ、車は本殿の傍をかすめていった。
瞬間、ヘッドライトが何かを照らし出した。
ガツンッ!!
鈍い音がして車は止まった。
しばらく、そのままだった。
運転席のドアがゆっくりと開いた。
「何とか仏にならずに済んだな。くそっ、いてえ」
そのドアから、エアバックを押し退けながら課長がよろよろと出てきた。
「おい、お前ら生きてるか?」
課長は傷の具合を確認しながら車内の部下二人に叫んだ。
…ガタン。
しばらく間をおいてドアから部下二人が顔を出した。
「イタタタ…」「全く酷い目に遭った」
二人は咄嗟にシートベルトを締めたお陰でダメージが緩和されたらしく、サイドガラスで多少頭を切った程度の怪我で済んでいた。それでも足をやられたようで、びっこを引きながら課長のところまで歩いていく。
「一体何にぶつかったんだ?」
課長は改めて車の方を見て青冷めた、を通り越し既に死相ともとれる顔をした。
そこには月光に照らされてボンネットの無惨にも醜く歪んだ姿のシルエットが浮き彫りになっていた。
「俺の新車…あぁ」
課長は力なくその場にしゃがみ込んだ。
部下の二人はそんな課長を尻目に車がぶつかった物を見ていた。
「何だこりゃ」
車から1bほど離れた場所に軽自動車の大きさほどもある石碑が横倒しになっていた。石碑には締縄がかけられていて、石肌には深々と文字が刻まれている。
文字はこう読めた。
『霊魂をこの地に、躯を比叡に封ずる。命惜しくば触れるべからず』
青白い月明りに照らされてそれは一層不気味に見えた。
「コイツ…コイツのせいで!!」
ドガッ、ドガッ、ドガッ。課長は石碑を怒りに任せて何度も蹴った。
「課長これヤバイっすよ」「絶対祟られますって」
部下二人は暴れる課長の腕をがっちり掴んで石碑から遠避けていった。
「離せ、離せ!!」
課長は駄々っ子のように足をジタバタしている。
蹴られた石碑の、
締縄がゆっくりと、
音もなく地面に、
落ちた。
途端、石碑が薄紫色に怪しく光りだし、大地が激しく揺れ始めた。
グカカカカカ!!
突然、地響きを掻き消して心臓を鷲掴みされるようなおぞましい声が辺りを覆った。
薄紫色の光は急激に強さを増していく。そして石碑から紫煙のような火の球が現れた。
"礼を言うぞ"
そう言って化け物の火の球は空に昇っていった。
「ギャー!!」
酔っ払い三人組は我先にと階段を転げるように下りていった。
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