■ ノベルス ■
□ヒトトキのうた
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しとしとと降る雨の中、あなたはぽつりとただ一人。
周りは深い森の中。
寂れたバス停屋根にして、木製ベンチに座ってる。
トタンの屋根にぽんぽんぽん。
雨の子跳ねてはくすくす笑う。
あの木もその木も肩組んで、体揺らして枝振り歌う。
歌は葉っぱを震わせて、しずくはくるりとでんぐり返り。
くるくるくるくるでんぐり返り。
ユリの葉、ハスの葉、スミレの葉。
ふわりとしずくを包んでは、つるりんつるりと渡してさよなら。
しずくはそのたび振り返り、お母さんだと涙をこぼす。
葉っぱのクッション敷いてない、びちゃびちゃ土のドロが見え、ちょっぴり不安になるけれど、しずくは負けないくじけない。
葉っぱのみんながくれた物。
いっぱいいっぱいくれた物。
ぴちゃんと小さな音たてて、しずくはえいっと飛び込んだ。
みなもに456波がたち、しずくは泉になりました。
しとしとと降る雨もやみ、あなたはゆっくり立ち上がる。