■ ノベルス ■
□帰り道の夕日
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何も思い浮かばない
ただ景色は流れていく
そろそろ日も暮れてきた
夏が近いからそれでもまだ空は明るい
さっきとても綺麗な夕日を見た
目の裏にいくつもの残像を残して
見事に赤く卵黄色をたたえた光は雲の中へと沈んでいった
雲はその光の中で山のような立体的に存在していた
日の当たらない頂きは青く、下に下るにつれ紫、紅へと染められていた
私は画家ではないから、あの色をどうしたら出せるかは知らない
透明なビー玉の中にあの空を写し込みたいと考えるだけ
最後に夕日を見たとき、白い尾をひいた飛行機の影が斜めに飛んでいった
私の目に夕日の中を進む飛行機はしっかりと写し込まれた
電車に身を委ね窓の外を眺めていると私はあの夕日を探していた
景色は忙しく流れていく
目を閉じれば、夕日