ウルトラマン闘牙

□第4話「灼熱の街」
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太陽に煽られて、見えない糸のような陽炎が束になってうねりながら空に昇っていく。
動くのが億劫になった空気は地面近くに溜まって、時折面倒くさそうに動いては重く暑苦しい風を起こす。
鳥は空を飛ぶ力もなく木陰に身を潜め、道端には干からびた蛇やトカゲが倒れていた。
異常な猛暑に見舞われた日本。各地でダムや貯水池が干上がり、かつてない水不足が猛威を振るっていた。日に日に水を巡る暴動が激しくなり店という店から飲料水が姿を消した。
「この店もか…」
駅前のスーパーの食料売り場で、大きめのリュックを背負った男性は深いため息をついた。同じくその隣に立っていた高校生らしき青年も心底ガッカリしたようにうなだれる。
「…まじか」
食料品の棚には野菜のやの字も見当たらず、飲料水に至ってはお汁粉すら残っていない。
"売切れました"
走り書きで画用紙に書いてあった。
「次行くぞ」
男性は、石のように動かなくなった青年を引きずりながら店を後にした。
「父さん、少し休憩しない?」
青年は父親らしき男性に引きずられながら言った。言った瞬間青年の襟首を掴んでいた手が離れた。ドタッ。
「お前、今背負っている水だけで暮らせると思うか?」
父親らしき男性は振り向きもせず言った。青年はついた砂を払いもせずヨロヨロと立ち上がった。
「…思わない」
「じゃあ歩け」
青年は、父親らしき男性の背中を見ると諦めたようにまた歩き出した。そして、一度だけ空を見上げて呟いた。
「美雪、どうしてるかな」
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