ウルトラマン闘牙

□第3話「甦る古代」
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深夜、農道を一台の車が走っていた。
夜空には真ん丸の月が輝き、それに答えるようにして、周りに無数の星が瞬いている。
制限速度お構いなしのスピードで走る車のヘッドライトの光が道を跳ね、豪快なエンジン音が尾を引いていく。
この農道は最近できた住宅街に続いている。まだ他に道が整備されていないので、せいぜい軽トラや猫車しか通ることのなかったこの道にも普通車が通ることになったのだった。
車の中には大音量でサウンドが流れていた。
「つかみ〜かけたアツい腕を、振りほど〜いてキミはでていく〜♪ってか」
運転者は赤ら顔で傍目にも飲酒をしていることが明らかだった。
「かちょ〜、何で助手席には座らせてくれないんでしたっけ?」
「あぁん?助手席にはな、女を座らせるって決めてるんだ。だ〜れが野郎なんて座らせるか」
そういう課長らしき男の目は座っていた。
「でも、かちょうに当てはあるんですか?」「何なら今度合コンでもします?」
部下の二人は酔いに任せて口々に好き勝手なことを言い出した。
「んだと、振り落とすぞコラ」
課長らしき男は、急に不規則なタイミングでハンドルを切り始めた。後部座席の二人がシートベルトなどしているはずもなく、容赦なくサイドドアにぶつかる。そして、課長の壊れた笑い声が響く。
「わぁー止めて下さいよ!っ、痛え」「オェ、吐きそう」
部下の一人は口を手で押さえ青くなっている。
「馬鹿、吐くな吐くな!!」
まだ新車の匂いが残り、まだまだローンが残る愛車が危ない。課長は運転そっちのけで後ろを振り向くと怒鳴った。
「!?前前前!!」
月光の下、後部座席からでもフロントガラスの向こうが見えていた。それまで口を押さえていた部下の一人が弾かれたように前を指差した。
「ん?ん!!?」
課長らしき男は訝しげに指のさす先を目で追って、言葉を失った。
目の前には鳥居から続く石の階段が大きく口を開けていた。
咄嗟にハンドルを切るが間に合わない。
「ギャー!!」
車は石段に乗り上げると耳をつんざくブレーキ音と、車体が砕け軋む金属音を上げながら無理矢理石段を登っていった。車内はロデオのように揺れ、後部座席の二人は仲良く天井に頭をぶつけ、課長らしき男は思い切り舌を噛みながらハンドルにしがみついていた。
胃の中の物を全て戻しそうな揺れが何度か続いた後、一瞬車体が浮き上がり、次の瞬間、地面をバウンドした。
「止まれー!」
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