妄想文
□落葉
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いくら強く想っても
どんなに恋しいと懇願しても
お前と私が…結ばれることなんか有り得ない
胸に膨らんだ想いなんて 紅く色付いては散っていく葉の様に
それは一時の戯れか 幻想としか考えられない
私達を取り巻く運命なんて…結局そんなものでしかないんだから
落葉
「なんかさぁ…ホント…綺麗だよなぁ…」
「…何がだ」
「何って…かすがだよ」
先日の戦で流れた血の臭いが微かに残る、戦場。そこから幾分も離れていない森林の中に、私達はいた。
"逢引"とはとても言えないような約束の度に、佐助が私に告げる「綺麗」という言葉は、普通の女なら喜ぶだろう甘い一言。
しかし、私はあくまでも血濡れた戦忍であって、女ではない。
だから、奴が何を言おうが、単なる気休めの戯言か、冗談にしか聞こえないんだ。
「…お前は私をからかっているのか」
「まさか…流石の俺様だって、冗談でそんな事言わないよ」
いつも飄々としていて、それでいて妙な所で鋭いこの忍が、驚くほど正直な性格をしているという事は知っている。
何故こいつは事あるごとに、「綺麗」だの、「可愛い」だの、思ってもいない言葉を口にするのだろうか。
血に手を染めた私なんかよりも、己の膝に乗った、こいつの明るい、まるで色付いた楓のような髪の方が、よっぽど綺麗なのに。
その理由なんかわからないけど。
その髪に指を差し入れながらそんな事を呟いたら、「俺が楓なら、かすがのはいちょうみたいだよ」と、くすぐったそうに笑った。
その笑顔を見ていたら、何故だろう。チクリと胸の何処かが傷んだ気がした。
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