妄想文
□眠る
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隣に横たわる彼が寝息を立て始めた頃、むくりと上半身を起こした。もちろん、彼を起こさないよう慎重に。
「…お前には、全て見えていた…という事か…」
薄暗い暗闇の中に輝く銀髪の中に、そっと握られていない手を通す。だらしなく開いた口から漏れる寝息は、緊張感もなく、安心し切っている証拠で。
明らかにこやつの方が腑抜けている筈のに、余計な所で鋭い。
「こやつに分かるようでは…我もまだまだという事か…」
合わせた唇や撫でられた髪、元親の触れた箇所全てが、どんどん熱を帯びていくのが嫌というほど良く分かる。
"恥ずかしい"という気持ちよりも、寧ろ嬉しさで胸がいっぱいになって。
「ありがとう…元親…」
"自分の異変に気付いてくれて"
起きていると絶対言えない言葉が、自然と声になっていた。
自身がこんなに素直になると言うのは、本当に珍しい事で、自分でも驚きを隠せなかった。
"全て元親とこの眠気のせい"
そう決め込んで、もう一度寝ることにした。
朝起きたら、真っ先に隣にいる男に抱きついて、1日離さないでいてやろう。
そう思い目を閉じたら、"おやすみ"と優しく呟かれた感じがしたが、朦朧とする意識の中では、それは夢か現実か分からなかった。
ただ、鮮明に残っているのは
温かい唇の感触だけ。
fin.
→後書き