男古

□幻想と現実
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その光景を街で、目にしたとき、思わず、手に持っていた携帯を落としそうになった。



やたらと心臓がうるさく鳴り、なぜか、目の奥が熱くなった。




「…古市……先輩…?」




俺の目の前を、歩いているその人は、1年前に石矢魔学校を卒業した、古市先輩に後ろ姿がそっくりだった。




単純な話、俺は、古市先輩が好きだった。




でも、古市先輩には彼女がいて、俺は卒業式の日に、自分の気持ちだけ伝えて、走って帰った。




ドクドクとうるさい鼓動。




あれが古市先輩だったらなという、小さな希望。




だが、その人の髪の色は、真っ茶色だ。




古市先輩は、透き通るような銀色の髪だったから、何か違う気もする。




振り返ってくれたりしねぇかな……




今1番会いたかった人。
でも、同時に1番会いたくなかった人でもあった。




会いたいけど、会ってしまったら、自分を抑えられなくなる気がした。




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