Admiral of Empire

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誰もいなグラウンドでボールを抱えて座り込む

一体誰がこんなことを…。

でも、思い当るのは一人しかいない

「お父さん…、」

多分、絶対、影山さんの仕業だ。
我が父ながらなんともまあ…。

深く長い溜息が自然と漏れる。

過ぎた事を悩んでも仕方ない
私は私にできることを考えよう。

その答えに行きついて、私は立ち上がるとスタジアムを後にする。


やけ食い用のダッツを買った帰り通りかかった河川敷に彼はいた。

「あれ、鬼道君…と豪炎寺くん?」

二人がなぜかボールの蹴り合いをしていた。
その様子は鬼気迫るものがあった

遠くで聞き耳を立ててみる。
断じて盗み聞きじゃないよ!

「世宇子中を倒したい」

これは鬼道君の本音だ。
何もできず倒れて行く仲間を見ているしかなかった鬼道君の
心の底からの想いだ。

「円堂に背中を任せてみないか」

豪炎寺くんの言葉に鬼道君が驚く。
私もその言葉の意味を瞬時に理解した。

しばらくして、その場に残っていた鬼道君に声を掛ける

「鬼道君!」

名前を呼ぶと、とても驚いたようにこちらを振り返る

「如月先輩…」
「雷門に、行く?」
「聞いて…いたんですか」

私の言葉に少し間を開けて答える。

「転校手続きしなくていいの?試合、近いでしょ?」

確か、雷門と千羽山中との試合まで2日ほどだった気がする。

「え…?」
「世宇子に勝ちたいんでしょ?」

尋ねれば、鬼道君は頷くが、でも…と続ける

「帝国を捨てることはできません…俺は帝国のキャプテンなんです」

うん、どこまでも真面目な鬼道君です。

「うん、鬼道君は帝国のキャプテンだね」

だからこそ、と。

「源田君や佐久間君、みんなのために世宇子に勝って」

私の言葉に、何も言わずに鬼道君は俯いた。

「鬼道君が決めたことなら、誰も何も文句は言わないよ」

ね?と鬼道君の肩に手を置いて言う。
すると、鬼道君は顔をあげた。
ゴーグルから見える瞳に迷いはなかった。

「如月先輩、ありがとうございます」
「ううん。鬼道君一人にこんなこと頼んでごめんね…」
「いえ、これは俺の意思です。だから如月先輩が気に病むことはありません」

その言葉に私は微笑むと、袋からダッツを取り出して彼に渡す
お金持ちだからダッツくらい食べ飽きてるだろうけど。
それを受け取った鬼道君はもう一度私に頭を下げると、背を向けて行ってしまった

「行ってらっしゃい!」

その背に向かい声を掛ける

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