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□いっそ、
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・臨也side






「俺と別れてくれないか。」


そう俺が冷たく言われたのは、つい先日のこと。











俺には恋人がいた。
相手は俺と犬猿の仲とされている平和島静雄。
俺は、彼のことが高校時代初めて会った時から好きだった。

所謂、一目惚れという奴だった。殺し合いをしている時も、シズちゃんの視界に俺がいる。それだけで十分だった。


でも、日に日にその想いは強くなっていった。殺し合いをして、視界に入っているだけでは足りなくなる。
もっと、シズちゃんの近くへ行きたい。その手に、触れてみたい。



そして、そう思い始めてしばらく経ったある春の日、

「俺、シズちゃんのこと好きなんだよね。」


そう、冗談じみた告白をした。



その数日後、本気にしたのかわからないが、シズちゃんはその告白を受け入れてくれた。
表では変わらず喧嘩をしていたが、裏では恋人として接してくれた。俺はそれでも良かった。嬉しかった。


その生活は一年、二年と続いた。数は少ないが、手を繋いだ。キスもした。デートもした。たくさんたくさん、恋人らしいことをした。

そんな毎日が、楽しくて仕方なかった。幸せ過ぎるくらいだった。





でも、俺にもついに終わりが来たのだ。夢から覚める時が、来てしまったのだ。



「もう、終わりにしよう。」


理解するのに、時間がかかった。
なんで。どうしてどうしてどうして?
最近大きな喧嘩をしたわけでもない。何か怒らせるようなこともしたつもりはない。
なら、どうして。


「…正直言って、お前重いし。男同士っつっても限界があると思うから。」




そう言うと、俺のことを一回も見ずに、シズちゃんは俺の視界から消えた。
涙を流す、余裕すら無かった。

そこからの記憶はあまりない。



気がつくと、俺は新羅の住むマンションの前に立っていた。


なんでここに来たのかはわからない。どんな風にここまで来たかもわからない。

強いて言うならば、唯一俺の気持ちを知っていた友人のところへ、逃げたかったのかもしれない。



インターホンを押す。するとすぐに新羅が出てきた。


「…臨也?」

「…。」

「入りなよ。」


言わずとも何かを察した新羅は、中に入れてくれた。
リビングまで行って、ソファーに座る。新羅は隣に座り、話を聞き始める。


「…静雄と、何かあったのかい?」

「振られた。」

「やっぱり。」


まるでわかっていたかの様に新羅は言う。


「…何となく来た時の落ち込みようで察したよ。」



俺はどうしてか強がらないと自分を保てない気がして、口からは心にも無いような言葉が次々とこぼれる。


「…ははっ、まぁそうだよね。シズちゃん、俺と付き合い始める前は、クラスで人気の女子のこと好きだったって噂もあったし。結局俺とシズちゃんは釣り合わなかったんだ。なんとなく、わかっていたし、」


そうすらすらと話していたら俺の言葉は強制的に止められた。
俺は、いつの間にか温かいものの中に埋まっていた。




「…いつまで、そんなこと言ってるんだい。」


淡々と聞こえる声。俺にはどうすればいいかわからない。


「何のためにここに来たの?辛かったこと、全部吐き出したかったから、ここに来たんじゃないのかい?僕の前でくらい…、」


新羅は一度言葉を切る。
そして軽く息を吸うと言葉の続きを言った。




「…素直になって、くれないのかい。」



その言葉を聞いた瞬間、何かがぷつりと切れた様に俺は我を忘れて泣き叫んでいた。

強がって保っていた心が、一気に解れていく感覚だった。



このまま、我と一緒に、

この恋心も消えてしまえばよかったのに。



(そのとき、)
(俺は気付かなかったんだ。)
(俺を包んでいた新羅が)
(静かな笑みを浮かべていたなんて。)

















*
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新羅sideで続きます!

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