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□約束の有効期限
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・静臨過去捏造(幼なじみ設定)
・喧嘩しないしむしろ仲良し。
・静(←)臨な切ないざや









『俺、大きくなったらシズちゃんのお嫁さんになる!』

『はぁ?おまえは男だろーが。お嫁さんっつーのは、女の人がなるもんなんだぞ。』

『えー…、じゃあ、せめてシズちゃんの大切な人?になりたいなぁ。恋人っていうの?』

『大切な人、か。それならいいかもなぁ。』

『やったぁ!絶対だよ!約束!』

『おう!』

『ゆーびきーりげーんまん』…





















「ちょっと、起きてちょうだい。今日は大事な用事があるんでしょう?」

「ん…、あぁ…ごめん。起きるよ…。」



晴天の空。朝一番に見た景色は、雲一つない憎らしいほどに綺麗な青空だった。

眩しい。
今の俺には鬱陶しいとしか思えない日差し。秘書に起こされ、俺は重い体を起こし、寝室を出た。



今日は、俺の友人の結婚式。おめでたい日であるにも関わらず、俺の気持ちは下がるばかりであった。

普段はあまり着ないワイシャツとスーツに腕を通す。
こんなおめでたい日に俺の気分が下がり気味なのには、理由があった。
今日の結婚式の主役の人間は、平和島静雄。俺の友人であり、幼なじみである男だ。仕事の先輩の紹介で知り合った女性と交際を続け、ついに結婚に至ったらしい。

俺には、誰にも言っていないことがあった。もちろん、友人のシズちゃんにも。
俺にとってシズちゃんは、おそらく最初で最後であろう、恋心を抱いた相手だった。



きっと、小さい頃約束をしたあの日から、俺はシズちゃんのことが好きだったのだろう。



「…よし、」

鏡の前に立ち、髪や服装を整えると、俺は重い足取りで外へ出た。











「おめでとう静雄。」

「お前にしては早い結婚だったじゃねぇか。」

「末長くお幸せにな。」


結婚式も終盤に近付き、白いタキシードを着たシズちゃんは、たくさんの友人や親族に囲まれて、幸せそうに笑っている。
俺はそんなシズちゃんを遠くから見ていることしか出来なかった。本当なら、おめでとうの一言だけでも言わなくちゃいけないのに。
素直に、彼の幸せを喜べなかった。

隅で俯いていると、シズちゃんがいつの間にか目の前にいた。


「お前も、来てくれたんだな。」

「…うん、招待状までくれたし。せっかくのおめでたい日だしね。改めておめでとう。シズちゃん。」

「あぁ、ありがとな。」


そう言ってニコッと笑う。その顔は幸せに満ちていた。その笑顔が心に突き刺さる。








そして時は流れ、花嫁のブーケトス。誰もがブーケを受け取ろうと意気込む中、俺は興味もなさげにその人込みに紛れていた。
花嫁が後ろを向き、ブーケを投げる。
そのブーケは、まったく予想しなかった方向へ落ち、吸い込まれるように俺の腕の中に収まった。



「…え…。」


一番驚いたのは自分自身だった。
欲しかったわけではない。取ろうとしたわけでもなかった。なのにブーケは俺の腕の中にある。
驚きを隠せない俺のそばに、人込みを掻き分けてシズちゃんがやってきた。


「良かったな臨也。」

「あ、う…うん。」

「次はお前の番だな。その時は結婚式に呼んでくれよ。」


そう言って笑いながら肩を叩く。
その優しさが、辛くて、切なくて、苦しい。


涙が出そうになるのを堪えて、精いっぱいの笑顔を作り、俺は言った。


「もちろんさ。」



そんな時が訪れることないのは、知っていたけれど。







最後まで聞けなかった、気になっていたこと。



『あの時の約束、覚えてる?』




あの約束の有効期限は、今日で切れることになる。





(もしかしたらあの約束の有効期限は、)
(とっくの昔に、)
(まだ俺が望みを持っていた時から、)
(切れていたのかもしれない。)





















*
切ないざやらぶ…!
甘々好きな方には申し訳ないですが私は甘々書こうとするとどうしても変な方向に向かってしまいます←

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