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□拝啓、恋した君
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・ただ思いを綴る来神臨也さん








シズちゃんへ


やぁシズちゃん。


俺からシズちゃんに手紙なんて送るなんての初めてだし、


シズちゃんにとっては反吐が出るくらい嫌な事だろうけど、


この手紙には最後まで目を通してね。



もうすぐ、卒業だよね。


あっという間だよね。三年間ってさ。


シズちゃんと最悪な出会いをしたあの日から、もう三年が経ったんだよ?


シズちゃんにとっては…どんな三年間だったのかな。


やっぱり、思い出したくもない最悪な青春時代?


…たぶん、そうだよね。



俺はね、確かにこの三年間、シズちゃんとは殺し合いしかしてなくて、


いつまでも終わらない不毛な事をしてきたと思うけど、


楽しかった。


仲良くなんてしてなくても、


シズちゃんと過ごす時間が。


毎日毎日、顔合わせると喧嘩の始まり。


シズちゃんはもちろん、他の生徒とかは、はた迷惑だったろうけどさぁ。


シズちゃんは、きっと気持ち悪いって思うかな。


俺がこんなこと思ってたなんて知ったら。


…でもまぁ、


それが当たり前の反応だよ。


そう思うのは、


シズちゃんが本当に、俺のことを嫌いだったから。


俺、さ、


直接言うことは、ついに叶わなかったけど、



シズちゃんのこと、好きだったんだ。


だから、シズちゃんにあんなに付き纏って、馬鹿みたいに喧嘩して。


でも、それだけで良かったんだ。


シズちゃんの時間の中に、


少しでも俺が居てくれたら。


少しでも、


シズちゃんと過ごすことが出来たら、


それで十分だった。



…でも、


今は、少しだけ後悔してる。


あんだけ一緒に過ごしていたんなら、


冗談みたいにでもいいから、


ちゃんと自分の口で「好きだ」って伝えればよかった。


そしたら、


こんな手紙も書かなくて良かったのにさ。



…ねぇシズちゃん、


俺、この手紙を最後に、


シズちゃんと関わるのは、もう終わりにしようと思うんだ。


シズちゃんにとっても好都合でしょ?


これ以上関わっても、きっと何も変わらないし、意味もない。


だから、区切りをつけるよ。



シズちゃん、


さよな―――









最後の一文字を書こうとした手が震える。
「さよな」の文字が温かい雫で滲む。


決意したはずだ。
これで最後だと。




でもやっぱり、

さよならなんて、悔しいよ。




こんなにも、愛していたのに。



俺は乱暴に涙を拭うと、二枚にも渡った手紙をぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱に放り投げた。




俺は俺らしく、
何も言わずに、目の前から立ち去るとしようか。

そう心中で呟き、俺は自虐的な笑みを浮かべる。



――ありがとう。

――…恋した人。





(ありがとうシズちゃん)
(人間性の無かった俺に、)
(少しでも、)
(人間らしい感情をくれて。)

























*
いつもお世話になっているお題配布サイト様をのぞいていて、素敵なタイトルを見つけて一目惚れして衝動書きしました←
なんだか前回とラストが似ているような……←
来神時代は書きやすい…気がします((

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