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□愛してるが故に
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「あぁぁっもう!」



俺は今すごく腹がたっていた。
久しぶりにこんなにイライラした気がする。
様々な思考を巡らせながら、俺は新宿の自分の住むマンションへ向かった。


今日、俺がこんなにも腹をたてている理由。
それは、簡潔に行ってしまえば『嫉妬』だった。
最近シズちゃんの仕事仲間に加わった、金髪の女性ヴァローナ。
仕事内のシズちゃんとヴァローナの仲が悪くないのは、俺も知っていたし、まぁそれくらいは田中トムも同じ事だから別に良いだろうと、口出しをしたことはなかった。

しかし今日池袋での取引があったため、俺は久々に池袋へ出かけた。
待ち合わせ時間より少し早く来ていた俺は、もしかしたらシズちゃんに会えるかもしれないと思い、その辺をぶらぶらしていた。


そこで、だ。
ある喫茶店にシズちゃんに似た姿を見つけ、一緒にいる人間を確かめようと、そっとばれないように窓から相手を確認した。

その相手が、そのヴァローナだった。



相手を確かめた瞬間、俺はすぐにその場から走って離れていった。
ただ、怒りが脳内を渦巻いていた。

もう一人の上司が居たのならまだ許しただろう。だが、自分の恋人が女の子と二人っきりで喫茶店でお菓子を食べていた、そんな光景を見て、嫉妬している俺はおかしいのだろうか。



「もう本当ムカつく…っ」


そんなことを思い出している内に俺はマンションに到着し中へ入って乱暴にソファーに座った。

疲れをとるために一度寝ようか、そんなことを考えてみたが怒りが鎮まらない限りそれは出来なさそうだ。


だからといってどうすれば…、そう考えようと思考回路を働かせようとしたその時。



「…っ!」



突然の携帯の着信。
携帯を手にとり、画面を確認する。


――『シズちゃん』


未だに着信音を鳴らす携帯の画面には、そう表示されていた。



「…電話になんか出る気にならないよ。」


そう小さく呟くと、俺は手に持っていた携帯を床に投げつけた。
そのまま着信音は続いていたが、しばらく経つと着信音は止まった。

しかし、すぐにまた着信音が鳴り響く。相手は恐らくさっきと変わらないだろう。
俺はそれをまた無視をして、着信音がきれるのを待った。
するとまた着信音は途切れた。
しかしまたもや着信音が鳴りだす。

そんなことが何度も何度も繰り返され―…

11回目のコールが途切れた時。


いい加減しつこいから次かかってきたら出てみようかと思っていた瞬間。



「いざやあぁあっ!!」



馬鹿でかい怒声と、同時に何かが外れたような破壊音。
どたどたという足音に後ろを振り向く。


振り向いた先には、やはり先程まで電話を掛けていたであろう彼がいた。



「…シズちゃん、ドア外したでしょ。どうしてくれんの、弁償してよ。」

「んなこたぁ、どうだっていいんだよ…。なんで手前電話でねぇんだ。」

「…悪いけど今はシズちゃんと話せる気分じゃないの。出てって。」

「あ゛ぁ?」



無意識でも怒らせたのはシズちゃんなんだから。
しばらくは話す気になれない。

…いや、でもここはあの時のことを問い詰めて見ようか。
そう考えた俺は、シズちゃんの方に顔を向けて言った。


「あのさぁ、シズちゃん昼間に、あの仕事仲間の金髪の女の子と一緒に喫茶店にいたでしょ。」

「…ヴァローナのことか?ていうかなんで手前がそんなこと…。」

「見たんだよ。池袋に仕事で行ったとき。」

「へぇ。で、それがどうかしたのか?」



…呆れた。
こっちの気持ちにぐらい気付けよ。


「…だから、なんであの子と二人っきりでいたわけ?!」


少々力んでしまったが、言いたいことは伝わっただろう。
少し間が空くと、ぽかんとしたままのシズちゃんが口を開く。


「なんでってお前、そりゃあの喫茶店のケーキだかなんだかが雑誌に載ってて、ヴァローナが行きたいっつってたから連れてってやっただけだぞ?」

「…そう。」

「…なんだ、お前もしかして嫉妬でもしてたのか?」

「……っ!!」


シズちゃんの一言で俺は体が動かなくなってしまった。それと同時に顔が熱くなるのがわかる。
そんな俺の様子に気付いたシズちゃんは、にやりと笑うと言葉を続ける。


「そうかそうか嫉妬してたのか。だから電話にも出なかったのか。なんだ、臨也も嫉妬なんかするのか。可愛いとこあんじゃねぇか。」



笑いを堪えながら喋るシズちゃんを見てるとすごくムカつくし恥ずかしい。
…くそっ、どうしてこうなった。


「ヴァローナはただの仕事の後輩だから、後輩としては良くしてるけど、変な気持ち持ったりしてねぇよ。だから心配すんな。」

「…逆に変な気持ち持ってたら最低だけどね。」


俺はそう吐き捨てると、シズちゃんの目から逃げるように顔を背けた。




「…俺にはお前しか見えてねぇから安心しろ。」



そう耳元で囁かれて、一発で機嫌が直っただなんて、言えるわけがない。




(俺はお前のもので、)
(お前は俺のもの。)
(だから、)
(他の奴らなんて、見えるわけねぇだろ?)















*
なんだかシズちゃんがすごいキザっぽく…←←
嫉妬臨也さんはただの俺得ですが何か((
その可愛さを表現できなかった…無念!

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