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□守りたいのは
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――シズちゃん、


――俺さ、


――もうすぐ死んじゃうんだって。




そう言ったあいつの顔は、
確かに、笑顔だった。










臨也が不治の病にかかっていたことが判明したのは、つい最近のことだったという。

近頃調子が優れなかったらしい臨也は、闇医者の新羅の住むマンションで診察を受けた。
そこで、余命一ヶ月の宣告をされたのだという。


確かに、最近臨也が池袋にきているところは見ていなかったし、臭いも感じられなかった。
こちらとしては心配ではあったが、なにしろ情報屋という職なのだから、いつもこっちに来るわけでもない。
そんなことを考えていた俺は、大してその事は気にしていなかった。


そして、一ヶ月ほど池袋に姿を現すことが無かった臨也が、久々に顔を合わせるなり軽く言い捨てた言葉。
それが、余命一ヶ月という内容の話であった。



「……は?」

「シズちゃんにはよく嘘をつくけれど、今回ばかりは嘘じゃないよ」

「手前が自分に対して、そんな縁起の悪ィ嘘話持ち出してくるとは思えねぇ。」

「あはっ!それもそうかも!」

「…手前、」


――なんでそんな笑っていられる?

それが俺にとっての率直な疑問だった。


「…なんで笑っていられるかって?」

「…!?」

「ははっ、だって、仕方ないじゃない。」

「なにがだ。」

「…不治の病にかかって、そして現時点で余命一ヶ月。…今更藻掻いて足掻き苦しんで何か変わるの?」



もっともなことだった。
臨也がかかったのは不治の病。
どんなに足掻こうが、治ることは夢のまた夢のような話である。


「…だけどよ、」

「?」

「そんな簡単に、諦められるもんなのか?」

「…。」

「そんな簡単に、笑って生きることを諦めて、自分の死を受け入れることが出来んのかよ。」


相手はしばらく黙って、俯いていた。
しばらくして、相手の肩が震えだす。
何事かと思っていると、それは笑っているのだとわかった。
何がおかしいのかわからない。だが笑っている。


「ははっ…、あははははっ!!」

「…何がおかしい。」

「…だってさぁシズちゃん、想像してごらんよ。もしも俺が、余命宣告をされたとき、泣き崩れて、助けてくれって懇願して、いつまでもいつまでも絶望していたら…、」


確かに、そんな余裕のない臨也は合わない、というか想像がつかない。
何があっても笑って、余裕ぶっている。それが、折原臨也という人間だった。


「…そんな俺、俺じゃないだろ?折原臨也っていう人間じゃなくなるだろう?」

「…。」

「だからこそ俺はこうやって受け止めて、最期まで人間を愛し続ける。」



――そうでもしなければ、俺はきっと崩壊する。

そう臨也は言った。



「…それじゃあねシズちゃん!まだ生きてたら、近いうちに遊びに来てあげる!!」



そうして笑いながら去っていく姿は、いつも見ている、あのうざったいノミ蟲と変わらなかった。

そう、いつもと変わらない。



だから、去りぎわに見たあいつの頬に伝っていたものは、見なかったことにした。




(俺が最期まで守りたいのは、)
(誰もが知っている自分)
(絶望して悲しむ俺なんか、)
(折原臨也じゃないんだ。)
















*
ちょっとシリアスにしてみました!!
自分でも内容を掴みきれてません←ぇ
最期まで弱い姿を見せたくなかったんじゃないかな、うん
そして相変わらずの短さですみません…。

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