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□君に捧ぐ
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『お前が、好きなんだ。』
『…本気ってことくらい、目見りゃわかるよな?』
俺、紀田正臣は親友の竜ヶ峰帝人に告白をした。
ずっとずっと抑えてきた気持ちを、ついに俺はあいつに伝えた。
帝人は、びっくりした表情をした後、嬉しそうにするわけでもなく、悲しそうにするわけでもなく、一度苦笑すると、少し考えさせて、と言った。
…そう言った日から、既に一ヶ月半が経とうとしている。
……………って、
ちょっとまてぇえええええぃ!!!
一ヶ月半って…!いくらなんでも空き過ぎじゃねぇか!?
忘れてる、なんてことはないと思うけど…。
帝人に限ってなぁ…。
だが、自分から返事まだ?なんて聞けるはずもなく、ただただ時間だけが過ぎ、それと同時に焦りは募るばかりだった。
そんな事を考えていたある日。
「…ま、正臣…」
「ん?どうした?」
「…今日話あるから……後でちょっといい?」
「うん、わかった。」
来たか。
やっと告白の返事が…。
「うぉー…」
帝人と別れたあと、一人情けない声を上げてうなだれる。
…やっぱ、こういう時って不安になるもんなんだなー…。
そんなことをがらにもなく考えていながら、時は流れていき……。
「正臣、今大丈夫?」
来てしまった。
ついにこの時が。
「…おぅ!」
胸の奥の感情の高ぶりを隠しながら、帝人のもとへ向かう。
帝人に連れられて着いたのは、人気のない、今はあまり使われていない教室。
帝人はその教室に入り、俺と向き合う。
俺の緊張は、ピークに達していた。
振られるか、それとも応えてくれるか…。
俺は汗が滲む手を強く握った。
しばし沈黙。
すると帝人が、どこからか茎から切り離したピンク色の胡蝶蘭の花を取り出した。
「…はい、これ。」
「え?あ…え?」
その胡蝶蘭の花を、無理矢理俺の胸に押しつけてくる帝人に、俺は戸惑いを隠せずに、間抜けな声を漏らした。
「…それじゃあね。」
「え、あ、ちょっと待てっ…」
…行っちまった。
なんだったんだ。
「はぁぁー………」
俺は大きくため息をつきながら、その場にへなっとしゃがみこんだ。
「俺の緊張を返せよぉー…」
どうでもいいことを言いながら、帝人から受け取った花を見つめる。
…それにしても、
「…これ、なんなんだ…?」
花ってことは当たり前だが分かっている。
分からないのは、これを俺に渡した意味。
「んー…」
しばらく考えたが、俺の頭に答えが出ることはなかった。
――――…
ピンクの胡蝶蘭の花言葉。
――あなたを愛します――
どうしても口で伝えられない少年が、やっと考え付いた返事の仕方。
それに少年が気付くのは、もう少し先のこと――…。
*
正帝って難しいことがわかった。
奈倉様、キリ番報告有難うございました!こんなものでよければ、どうぞ受け取って下さいませ。
これからも、境界線。をよろしくお願い致します。