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□馬鹿みたいだけど、
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・来神時代
・ギャグチック?
9月。長い夏休みが明け、都内の高校や中学校の生徒が、朝早くに登校する姿が再び戻ってきた頃。
暑さは引くどころか、生徒たちの気力を削ぐかのように残暑は厳しいままであった。
そんな、新学期が始まったばかりの放課後、額ににじむ汗を拭くシズちゃんに俺はとある話を持ちかけてみた。
「ねぇシズちゃん、いいこと思いついたんだけど。」
「なんだよ。」
「プール行かない?」
「…はあ?」
汗を拭う手を止め、いかにも不快な顔を浮かべるシズちゃんに、俺は構わず話を続けた。
「まだ暑さが引く気配も見えないしさぁ…、どこの学校でも新学期始まったんだから、夏休みよりかは空いてるんじゃないかなと思ってさ。」
そう言われたシズちゃんは、少し考え込むとうんうんと納得したようにうなずくと、答えを出した。
「…じゃあ、行くか。」
あの誘いをした週の土曜日。
俺たちは約束通り、近くの市民プールにやってきた。
で、その更衣室で普通に着替えようとしたんだけども。
「おい臨也。」
「なにさ。」
「お前、そんな水着で外出るつもりか?」
「え、え?」
言っておくが俺が持ってきた水着は、さほど変わったものではない。普通にその辺で売っているような海パンだ。
女子用スクール水着とか期待したやつは、とりあえず名乗り出てね。
あとでゆっくり潰してあげるから。
まぁ、それはそれとして、なぜこの普通の海パンがシズちゃんの気に障ったのか俺には理解できなかった。
というか、これ以外に普通のプールで着用する水着って無いと思うんだけど。
「他に着る水着なんて持ってきてないよ?」
「…ったく、しょうがねえな」
ため息をつきながら、シズちゃんは自分のバッグに手を突っ込み、がさがさと中身を漁ると、ぴたりと手を止め探していたモノをバッグから出した。
「ほら、これ着ろ。」
「あ、ありが…」
と、俺はお礼を言おうとした。しかし、言えなかった。
シズちゃんから受け取った水着を改めて広げて見ると、めったに動じることのない俺でさえ言葉を失ってしまった。
シズちゃんから受け取った水着、それは肌をほとんど出さないダイバー用の水着だったのだ。
一瞬頭が真っ白になり、冷静になった瞬間、俺はシズちゃんから渡されたダイバー用の水着を床に叩きつけた。
「なんだよこれ!!」
「それなら肌がほとんど見えなくて安全だろ?」
なに当たり前みたいな顔してこっち見てんだよ。全然当たり前じゃないだろ。異常だろ。
「あのさ…、こんなの普通の市民プールで着る人いないし、そもそも俺はこう…、さっぱりしたいからプールに誘ったのにこれじゃ意味ない…、」
「じゃあ俺のこの薄いパーカー着ろ。」
「そんなの許可されてないし、そんなんじゃ意味ないよ!」
いい加減俺にも限界がある。
もう耐えられないと思った俺は、公共の場というのも忘れて思わず叫んでいた。
「こんなの来た意味ないじゃん。俺はシズちゃんと自由に楽しみたかったから、プールに誘ったのにこんなに言われるなら俺もう帰るよ!」
そう言って、自分の荷物をまとめて早々に出ていこうとした時。作業する俺の手を、横からのびてきた手が遮った。
横を見ると、うつむいて申し訳なさそうに横目で俺を見つめるシズちゃんの顔があった。
「…ごめん。」
小さな声でシズちゃんは言った。
「そういうつもりじゃなかったんだ。ただ…、やっぱりいくら公共の場だとしても、他人に臨也の肌さらすのは、なんか許せなくて…。」
少し顔を赤らめながら、もごもごと話すシズちゃんに、俺はシズちゃんより数倍、馬鹿みたいに顔を真っ赤にして答えた。
「…それ、独占欲って言うんだよ。筋肉馬鹿。」
その後、シズちゃんに軽く小突かれたけど、俺たちは仲良くプールではしゃぎまわったとさ。
(馬鹿みたいだけど、)
(それがすごく愛しくて、)
(大概俺もどうかしてるみたいだ。)
*
えーと…、すみませんでした←
リハビリ&遅れた夏話を書いた結果がこれだよ!!
久しぶりすぎて文章力が衰退しました。頑張ります…。