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□誰が×××殺したの?
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・静←臨
・死ネタ
・ヤンデレ臨也
・流血表現有






東京、池袋。
若者が賑わう表側の世界とは裏腹に、カラーギャングの抗争や、粟楠会などといった裏の世界が非常に入り交じる街でもある。

裏の世界で足を踏み外し、どこやらの組の手によってコンクリートで固められて東京湾にドボン、なんて話も、この街ではありえない話ではない。




そして今日、この池袋から有名な街の住人が消えた。


全ては折原臨也のチャットログに残された、もう一人の情報屋、九十九屋真一からの伝言から始まった。




『なぁ折原、知ってるか?




今日、お前の宿敵平和島静雄が死んでるのが見つかったらしい。』








「…は?」


パソコンの画面を見つめたあと、最初に出た第一声は間抜けな声だった。
いや、他に何も言えなかった。


まだ整理のつかない頭でキーボードを打つ。



『どういうことだ。どこからの情報なんだ。確証はあるのか?』

『珍しく焦っているな。あれだけ喧嘩してきた相手が死んだともなれば、お前は喜ぶだろうと思ったんだが。』


その返答を見て少々苛立ってしまったが、隠す余裕などなかった。


『質問に答えろ九十九屋。』

『まぁ落ち着け。残念ながら人伝に聞いた情報だから確証と言えるものはない。そこらへんは新宿の情報屋の力でなんとかできるだろう?』

『出来ないことはない。だがあんたはもうなんか知ってるんじゃないか?』

『どうだかな。』


飄々とした態度に苛立ちが増す。もうここまでにしようかと考えていると、ログが一つ追加された。


『そんなことより、折原がそんなに焦るとは思っていなかったよ。あれか?よく漫画かなんかで出てくるような、普段は仲が悪くても、突然相手がいなくなると途端に寂しくなってしまう、みたいなやつなのか?』

『黙れ。』



その言葉を最後に、俺はチャットルームを後にした。
正直、頭の中は渦巻くどころじゃなかった。二度と戻らないぐらいにこんがらがっていた。




とにかく俺はその情報の確証を得るために、いつもの黒いコートを羽織り、街へ出ていった。









「…で運び屋。シズちゃんは死んだのか?」

『…お前ならてっきり全て知っているかと思ったが。』

「悪いけど今回の話に関してはほとんどまだ知らないんだよね。」

そう笑ってみせると、セルティは悲しそうにPDAに打ち込んだ。


『自殺か、他殺か。今はその二択で裏の方ではまわってる。』

「なにか根拠があるのかい?」

『そもそも静雄を殺せるほどの力を持つ人間がいるかっていうとわからないだろ?それなら殺せるのは自分しかいない。でも、自殺する動機がわからない。ならば他殺か…、でまた振り出しに戻るわけだ。』

「なるほど、ねぇ。」

『でも本当…、静雄が死ぬなんて…、信じられない。』


うつむいて見るからに落ち込むセルティを尻目に俺は立ち上がると、俺はいつも通りの笑みを浮かべて礼を言った。


「サンキュー運び屋。俺以外の人間に殺されたのは残念だけど、これで清々したよ。」




そう言うと臨也は部屋を出ていった。


セルティはこの時異様な寒気を感じていた。



こちらに向けられていた顔は確かに笑っていたのに、





臨也の紅い瞳は、暗い憎悪に満ちていたのだから―。











「あぁ、どうも。ご無沙汰しております。折原です。…えぇ、ちょっとお願いしたいことがあるんですが。」



セルティから話を聞いたあと、俺は一度マンションに戻り、ある人物と取引の約束をしていた。



「えぇ、はい…、少し、その『モノ』が必要になりそうで。安心して下さい。お金に関してはきっちり払いますので。」



悠長に話す臨也の目に、光はなかった。












「セルティ!!静雄の死んだ経緯がわかったみたい!」

『なんだって?』

「静雄は、一時的に催眠にかかる薬を飲まされて、拳銃で頭をやったらしい。犯人が自首したそうだ。」

『そうか…、なんてやつだ。』


そう打ち込むセルティの隣に立つ新羅は、ひどく焦っていた。


「まずいよセルティ、このままじゃ。」

『…え?』

「臨也を止めないと、まずいことになる。」

『何を言ってるんだ?臨也が何をするっていうんだ。』

「このままじゃ、池袋から消える人間が増えてしまうかもしれない。」




ただ一人、臨也の秘めた静雄への思いを知る新羅は、急いで凶行に走るであろう友人に連絡を取った。




――しかし、


時、すでに遅し。











「う、あぁああっ!!」




路地裏に追い詰められ、うろたえる一人の男。
体は傷だらけで着ている服も所々刃物で切り裂かれたように、破れてぼろぼろだった。



路地裏へ男を追い詰め、ゆっくりとした歩調で男に歩み寄るのは、先が少し赤く濡れたナイフを手にした臨也だった。

いつもの黒いコートは乱れ、髪の毛もいつもより整っていない。



男は怯え、今にも失神しそうな様子のまま目の前に立つ臨也を見上げる。


無表情。暗いために映える紅い瞳。
その二つが、より今の臨也に迫力を与えていた。


しかし、その無表情だった顔が一瞬にして狂気的な笑顔へと変わる。

そして男の首にナイフをつきつけ、話し始める。
いつもとなんら変わりない笑顔で。

そう、満面の笑顔で。



「ねぇ、君かい?シズちゃん殺したの。」

「ちっ、ちがう!俺じゃない!」

「君ならシズちゃんを殺すような動機もあるし…、そうかなぁって思ったんだけど。」

「ほ、本当だ!!本当に俺じゃない!」



男が必死に否定すると、臨也はそれを見兼ねたのか、一度ナイフを下ろすと、ナイフを折畳みポケットをしまった。


「…そう。疑って悪かったね。ここは君の誠実さを信じて、俺は退くとしようか。」



柔和な笑みを浮かべる臨也に安心したのか、男はすぐに立ち上がって、その場から逃げようとしたのだが、

臨也の隣を通り過ぎた直後、ガツッと男の頭に冷たい何かがあてられる。




「待て。」



先ほどとは違った、冷ややかで怒りのこもった声。
男の全身からは水を被ったかのように、冷や汗が噴き出していた。


その手には、確かに黒光りする拳銃が握られていた。



「……んだよ。」

「…っ…?」



臨也は新たに拳銃を強くつきつけ、滅多に上げない大声を張り上げて叫んだ。





「誰がシズちゃん殺したんだよッ!!!」




臨也は息を整えると、改めて聞いた。



「…なぁ、誰がシズちゃん殺したんだよ。」

「…ぁ、あ」

「…確証がなくてもいいから答えろ。」

「…そ、そんな、の」



臨也は男の耳元に顔を近付けると、感情のない声で宣告した。



「3秒以内に答えろ。でないと殺す。」




男の目がこれ以上ないというほどに開かれる。
ガタガタと震える男にも構わずに、臨也はカウントダウンを始める。



「3、」

「っまってくれ!本当…っ」

「2、」

「あ、てなんて、誰もないんだ!」



「1。」



男が命乞いをするよりも1秒はやく――、





静かな路地裏に、乾いた銃声が響いた。













足元に転がる男。

目を見開いたまま、横たわるそれからは、止めどめもなく血が流れ続けていた。


俺は拳銃を一度見つめ直すと、拳銃をコートにしまった。
そして男の頭を足でぐしゃりと踏みつける。



「コイツじゃない、なら他は誰か…。また情報を漁る必要があるねぇ。」



唯一の親友からの通告にも気付かず、


思考すら獣に成り下がった情報屋は、




何も知らない顔で路地裏を抜け、まだ明けない夜の池袋の街へと消えた。






(残された男の血だまりの中には)
(確かに、あの紅い瞳から流れた)
(未だ少し残る人間の証として)
(温かい涙がにじんでいた、)


























*
はい!久しぶりにこういうの書きたくて衝動書きしました!←
普段の臨也さんなら、こんな荒々しい真似しないで、社会の力で人を陥れますよね。
それをする余裕が無くなるほど、臨也さんはショックだったっていうのを感じていただけると幸いです。
一部後悔しているのは、どう考えてもセルティの悲しみ方が軽すぎたことですかね←

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