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□似た者同士
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・月島と六臂は同居設定
「…あれ、」
「にゃー」
「捨て猫かな?可哀想…いだっ!!」
「にゃあ」
「ちょっと触っただけなのに…、やっぱ怖いのかなぁ。」
日が暮れはじめ、人気のない廃れた公園の隅で、マフラーを巻いた金髪の青年が、小さな段ボール箱の前にしゃがんで何かに向かって話していた。
「…あの人が許してくれるとも思えないし、ごめんね。」
「…にゃー…」
「そ…、そんな声出すなよ。行きづらいだろ…。さっき引っ掻いた癖に。」
青年は困った顔をして、しばらくその場から動かなかった。
――――
「ただいま帰りましたー。」
「…おかえり月島。」
俺が玄関に入ると、六臂さんは静かに玄関まで来て俺を出迎えてくれた。「おかえり」の一言を聞くのか、ちょっとした俺の楽しみでもある。
俺が廊下に上がろうとすると、俺の腕の中にある小さめの段ボールを、不審気に見つめていた六臂さんが口を開いた。
「月島、ストップ。」
「はい?」
「その段ボール。なに?」
予想していた質問を、どうかわそうかと考えながら答えを言う。
「あー…、これはですね。」
脇に抱えていた段ボール箱を、両手で一度抱え直し、箱を開ける。
「…え、」
中身を見た六臂さんはいつもの六臂さんらしからぬ、口をあんぐりと開けた表情で、ぽかんとしていた。
無理もない。
なんの連絡もなしに、まだ小さな黒猫を拾ってきたのだから。
「にゃー。」
当の本人は何もわかっていないのだろう。
この空気には合わない可愛らしい声で鳴いた。
「…月島。」
「はい。」
「どういうこと。」
「あの…、どうしても見捨てられなくて…。」
「今すぐ元の場所に戻してきて。」
六臂さんは冷たく俺に言い放った。俺は必死になって説得を試みた。
「でもっ、もう春とはいえ寒いし…!こんな子猫を外に置くのはかわいそすぎます!」
「そんなの、月島は関係ないでしょ?捨てた元の飼い主が悪い。」
「で、でも…。」
「…何だか今日はしぶといね。いつもなら一回言い返されただけでも諦めるのに。」
確かにその通りだった。
なにに関しても、一度六臂さんに言い返されたら、大体俺はそこで折れる。
だが今回はちがかった。
この子猫には少し特別な思い入れがあったからだ。
「…この猫、少し六臂さんに似てるんです。」
「は?」
「その…俺が最初見つけて触ろうとしたら、警戒して俺の手の甲を引っ掻いたんです。その時は、持って帰るのはやめようと思いました。六臂さんが許してくれるとは思えなかったし…。」
月島は段ボール箱を床に置き、自分もしゃがんで子猫を見つめながら、言葉の続きを話した。
「でも、その場から離れようとしたら、甘えた声で呼び止めようとするんです。『行かないで』って言ってるみたいに。なんか…、それが六臂さんに似てる気がして。」
「…。」
「最初は掴み掛かってくるくせに、最終的には寂しくなって誰かに寄りかかる。そんな素直じゃないとこが、六臂さんと重なっちゃって、捨てられなくなっちゃって…。」
月島にそう言われてしまうと、こちらも捨てがたくなってしまった。
同時に、ちゃんと俺のことを見てくれているという嬉しさに、俺の心は満たされていった。
どうしようかな、と少し考えていると、段ボール箱の中にいた子猫がひょいと飛び出し、俺の足元にやってきて体を寄せてきた。
それを目を丸くして俺が見ていると、月島はくすっと笑って呟いた。
「…似た者同士だから、六臂さんには最初から心を許してるみたいですね。」
(この子の名前、「ロク」にしましょうよ。)
(なんで?)
(六臂さんに似てるから、六臂さんの六を取って「ロク」。)
(…単純。)
(顔は嬉しそうですけどね。)
*
猫ちゃん話が書きたかった…!!
暇なときに続編とか書くかもです((
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