short books & pict 2

□彩りは君の手で
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夢を見た。


ひどく奇妙で、

あまりに非現実的な。









そこはいつもの街の風景だった。
いつも暇な時、ふらっと散歩する池袋の街。

でも、俺が見た世界は、いつもとは違うと決定づける点がいくつかあった。
一つは、いつもの賑やかな空気は無く、自分以外の人間が誰一人いないこと。

そしてもう一つは、街に色が全くないことだった。


自分の金髪や、白いスーツの中に着ている鮮やかなピンクのシャツはいつものままなのに、
飽きるほど見てきた真っ青な空や、辺りを埋め尽くす建物には、一切色が無かった。
まるで、まだ清書されたばかりの絵のように真っ白だった。


いつもあるはずのものが無い。
それに、俺は恐ろしい孤独感を覚えた。心に沸き上がる恐怖と不安。



そんな時、脳裏に浮かんだ一人の人物。
俺の、何より愛しい人。

あいつがいなかったら、俺は、


息が詰まる感覚に苦しみながら、俺は名前を叫んだ。



『臨也―…ッ!!』








目を見開いた先は、いつもの天井だった。いつもと何一つ変わらない、マンションの一室。
俺は少し安心して、長いため息をつく。

だが、俺はあることを思い出し、急いで周りを見渡す。


臨也がいない。


今日は仕事が入っていたはずだが、そこまで遅くなるとは言っていなかった。
もしかして何かあったんじゃ…、と縁起でもないことが頭に過る。あんな夢を見たあとでは余計だ。

俺は急いで玄関に向かい、ドアの鍵を開けようとした。


だが、俺が鍵に触れる数秒前向かいから鍵が開けられた。



「…?デリ雄、どうしたの?」


扉が開けられた先にいたのは、いつもとなにも変わらない姿で、不思議そうに俺を見る臨也がいた。


何かを耐えられなくなって、俺はその場で臨也を抱きしめた。
今は、離れていたくなかった。


「え、ちょっ…どうしたのさ。」

「…心配した。」

「…あ、ちょっと遅くなっちゃったから?でもそんな、これくらいならよくある…、」

「変な夢、見たから。」


そう俺が言うと、臨也は一度キョトンとし、そっと微笑むと、俺の頭に手を置きなだめる様にさすった。


「…そっか。」


ただそう言うと臨也はしばらく動かなかった。
俺の中の不安も薄れ、身体を離すと、臨也は俺の目を見て言った。



「大丈夫。俺はここにいるよ。」



その言葉に何か温かいものがこみ上げそうになったのは、情けないから言わなかった。



(俺の何気ない日々とか、)
(当然のような色々な出来事が色づいているのは、)
(俺が存在するこの世界にお前がいるからなんだ。)















*
更新しなきゃ…!と思って書いたのがこれです((
悲恋ばっか更新してるので、普通(?)の小説にしました!!
デリック結構好きです。意外とヘタレだといいなぁ。

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