1月
ここは『桜橋駅』。
俺はホームで電車を待っていた。
雪の日のことだ。
電車は積雪のせいで15分ほど遅れているらしい。
辺りを見回すと、こちら側には俺1人だけ。向かい側のホームには真っ白なマフラーをした制服の女の子が1人いた。
よく見ると、色白で、頬と唇がキレイなピンクで、とても美人な人だった。
目は黒目が大きくて、吸い込まれていくように見つめてしまう・・・
と、考えていたら俺は目が長い間その子と合っていたことに気付き、目をそらした。
そうしたら、女の子は、かわいらしいものでも見たように「ふふっ」と笑った。
「あの・・・」
女の子が大きめな声で話しかけてきた。
俺が女の子のほうを向くと笑って
「西高の人ですよね?」
「・・・そうですけど・・・」
「あっ、あたし南高の2年の、岡崎っています」
「あ、そうなんですか。俺は2年の鈴木です。」
俺は俺じゃないくらい落ち着いて反応していた。
「いつもこの時間の電車なんですか?」
俺がそう聞くと、女の子は少し照れながらうなづいた。
「・・・いつも・・・見てたんです」
「・・・・え!?」
俺はドキッとした。見られてぃただなんて、全然気付きもしなかったから。
しかも、こんなかわいい子に・・・
「なーんてね。たまぁに見てました。」
「あ・・・はぁ・・・」
さっきまで舞い上がっていた俺のテンションは、今どんどん0に近づいてきた。
女の子はクスクス笑っている。
「ひどいですねっ。まったく・・・人で遊ぶだなんて」
「あはははっ、すいませんっ・・・反応が、かわいくってつい・・」
女の子は笑い続けている。
俺はあきれかけていた。
その時、電車のアナウンスが入った。
『まもなく、2番電車が到着いたします。黄色い線の内側でおまちください』
「・・・と言うことなので。・・・ぷぷっ。・・電車乗りますっ・・」
「いつまで笑うんですか・・・」
「飽きるまで・・・ぷぷっ」
電車がどんどん近づいてくる。
「あ!言い忘れるところだった。」
女の子は上目遣いでこちらを見た。
「ちゃーんと、用心しないといつか、襲われますよっ、かわいい鈴くん★」
「はあ?」
俺は目を丸くした。俺が?
誰に襲われる?
いつ?
わけのわからない言葉を言い残して、女の子は電車に乗っていった。
その後約5分、俺の乗る電車も来てホームには、ひと気がなくなった。