2011ボス誕記念祭開催!
□淫魔の王
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しゃらしゃらとした衣擦れの音が夢うつつに聴こえる。
――ああこれはいつもの金縛りとそれに伴う幻聴。
夢の中でまた夢を見ているような奇妙な乖離感と非現実感。
肉体は眠りかけているのに意識が覚醒した、所謂「睡眠麻痺」の状態――
そんな中でオレ――スペルビ・スクアーロは目を覚ました。
いや、正確には覚ましてはいない。
オレの脳には今あたかも実際見えているが如く寝室の様子が映し出されてはいるが、
こんな場合大抵目は閉じられたままなのだという。
それにしてはいつもの前兆がなかった。
あの「じ――ん……ざわざわざわざわ………」だけは何度経験しても厭なもんだ。
――と、固まったままのオレが暇潰しにどうでもいい事をぼんやり考えていると。
ぎしり
なにかの重みを受け止めてマットレスが沈む。足元だ。
(お゛ぉ、幻覚もかあ?今日はなんかすげえなぁ)
金縛りはもう何度も経験しているがいつもはせいぜい幻聴を伴うくらいなので、
はじめての幻覚にオレは妙に興奮した。
しかしこれはなかなかにリアルな感触。ほんとうに誰かが足元にいるかのようだ。
これなら確かに、金縛りを心霊現象と信じる人間がいてもおかしくはない。
しかし。
オレが呑気にそんな事を思っていられるのもそこまでだった。
ぎしり
ぎしり
足元から膝の辺り――そして膝の辺りから腰の脇へ。
そう、それは丁度ヒトの歩幅と同じ。
「それ」は徐々に枕元へ近付き始めたのだ。
ぞっとするよりも先にオレは焦った。
ただの幻覚ならいいがもしそうでなかったら――
真っ先に閃いた言葉は「敵襲」、それから。
――ボス!ボスを守らなくては。
次の瞬間オレは金縛りを強引に振り切っていた。見さらせ、愛の力。
反射的に撥ね起き鋼鉄の義手を握り込み躊躇なく「それ」へとぶち込む。
完全に不意をついてやったからオレは仕留めたのを確信した。
しかし。