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□Fly me to the moon
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プロポーズの計画を練るのには何ヶ月も費やした。
五ツ星ホテル最上階スイートルーム、オペラホール貸切、
はたまた専用旅客機での地球一周婚前旅行などなど――
その他諸々、とにかく思いつく限りのシュチュエーションを、
最高のプロポーズにするべくルッスーリアをも巻き込み、
ああでもないこうでもないと練りに練り上げての決行の筈だった。
ある意味「揺りかご」の決行準備時よりも頭をフル回転させたかも知れない。
しかし、ザンザスはほぼ固まりかけていたプランを突然放棄した。
なにか――違う。そう思ったからだ。
すまねえな。そうひと言だけ詫びると、ルッスーリアは小首を傾げ艶然と微笑んだ。
いいのよ、ボスの思った通りにするが一番いいのよ、きっと。
そのかわり、絶対にあの娘を「うん」と言わせて来てよね!
ただ、ひとつだけ。これだけは譲れないとザンザスが心に決めていた事があった。
それは――
(やべえ……どうする?……いや、落ち着け。考えろ俺)
――と、はっと思い立ちザンザスは窓から見える白い月に目をやった。
そして。
首に絡んでいたスクアーロの白い腕をそっとほどき、身を起こして。
おもむろに右手を掲げ、長い指先でそれを掴むような仕草をする。
折りしも――否、今夜はザンザスが待ちに待ち望んでいた満月。
この夜しかないと心に決めていた。
青白い月光がザンザスの逞しい裸身、古傷だらけの艶やかな浅黒い肌に陰影を落とす。
「お前に一番似合うのは、やっぱりあの石だろ――」
艶のある低く野太い声でそう囁いて。
その冷たく光る白銀の石――
大きく入った海のインクルージョンがまろやかな輝きをいっそう引き立てる。
ザンザスは指の長い大きな手のひらに載せ、目の前の愛する女へと差し出す。
そして想いを込めて。もう一度――
「俺と結婚してくれ、スクアーロ」