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□Fly me to the moon
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「結婚しよう、スクアーロ」


長い情交を終え、腕枕で恋人の髪を梳いていた。

とにかく今日は朝から、頭はそのひと言でいっぱいだった。




今日こそ恋人のスクアーロにプロポーズする――

彼――独立暗殺部隊ヴァリアーの長ザンザスはそう固く決心していた。

だから、愛を交わした後の余韻に酔って
思わず彼がそう口走ってしまったのはあながち無理からぬ事なのかもしれない。

しかし。

懸念していたよりもずっと自然にザンザスはそのひと言を呟いた。ここまでは良い。

その2秒後、重大なアクシデントに気づき深紅の瞳をかっと見開く。


(…しまった……指輪、忘れた……ッ!!)


端正な浅黒い顔がサーッと青ざめる。ちなみにここはスクアーロの部屋。

求婚の大切な小道具、特注のプラチナ台にFカラーのダイヤモンドを埋め込んだ
エンゲージリングを(サイズはルッスーリアがスクアーロを騙して聞き出した)
あろう事かザンザスは執務室に忘れてきてしまった。


――なんというザンザス・クオリティ。


(やべえ……どうする……?)

言ってしまった。口にしてしまった。もう後には退けない。

必死に平静を装うが、目付きが、様子が、落ち着きなく揺れ動く。
めちゃめちゃ挙動不審なのを隠しきれていない。

長い付き合いのスクアーロがそれに気付かぬ筈がなかった。

「………?」

まだ、ついさっきまでザンザスに注がれていた快楽の余韻に濡れるシルバーグレイの瞳で
訝しげにそれを見守るスクアーロ。

実は先ほどザンザスが思わず洩らしたセリフは、あまりにかすかな声で囁かれたため、
彼女の耳にははっきりとは届いてはいなかった。


ザンザス、焦り損。(トホホ)
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