頂き物vv

□Present
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触れるその感触がくすぐったくも心地良くて、アンジェリークは早打つ自身の胸元を押さえた。
もう一方、小さく音が鳴ると一対のイヤリングはニクスの手に移る。


「ありがとうございます」
「いいえ、このくらいの事ならいくらでも」


もう耳元を飾るそれは両方とも外したのに、ニクスの手はまだ耳たぶに触れたまま。
不思議に思って見上げるアンジェリークにどこか楽しそうに微笑み、ニクスはそのまま顔を寄せ囁く。


「いずれ、私からもイヤリングをお贈りしたいですね」


女王陛下の為ではなく、恋人専用のそれを。


「この聖地にも人材が集まってきました。
中には商人や宝石職人の方々もいるようですし、その方々が作られた中から私が選んでも良いかと」


それとも特注で作らせようかと。そんなニクスの言葉に嬉しくも面映ゆく思う。


「そ、そんな…ニクスさんからはこれまで色んな物をいただいたのに!」


アルカディアにいた頃も細かな装飾のされた懐中時計や女王の物語の絵本。ドレスも贈られたこともある。
そしてまだこの部屋には新しい―彼の部屋と自分の部屋を繋ぐ壁際の扉も彼が作らせたものだ。
そう、物だけではない。ニクスにはいつも、自分が知らず必要とするようなそんな心の籠もった何かを贈られている。


「ニクスさんにはいつも貰ってばかりだから、私はどうしたらいいだろうかって思うんです」
「ああ、すみません。貴女を困らせるための行為ではないのです。それに…アンジェ」


くい、と細い顎に指をかけ無意識に俯いていたアンジェリークの顔を上げさせる。


「私もいつも貴女に頂いているのですよ」
「え?でも私ニクスさんへの贈り物は…」


心当たりが無くて申し訳なさが込み上げてくるがそれも次の行為で瞬時に消える。
とても自然で、それでいて優しい所作で口付けられて、アンジェリークの白い両頬が朱に染まる。


「こうして貴女の唇を。眼差しを。そして私だけにしか見せないその万華鏡のように変わる表情を」


いつも、頂いているのですよ、と。
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