頂き物vv

□Present
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【Present】(間城佐綾様 作)




ヴェールごとティアラをそっと外し、サイドに上げられた髪のリボンを解く。
未だに女王の正装は着るときに女官達の手伝いがいるものの、
正装を解くとなると着るときよりはずっと楽なので次第に自分一人でも着替えられるようになってきた。


―と


ノックが数回鳴る音。それは廊下に面した自室のドアからではなく、壁に面したもう一つのドアから響く。
その扉の向こうに居る人物は只一人。


「あっ、どうぞ…!」


鏡台の椅子から立ち上がると、どこか落ち着かない様子でアンジェリークは来訪者を迎えた。


「失礼します。アンジェリーク」


鼓動が早くなったのは、ニクスが訪ねてきたこともそうだが名を呼ばれたことも要因の一つ。
普段執務中は立場を弁え「女王陛下」と呼ばれる。
それは少し寂しいことだが、休憩時間やこうして二人きりになると以前のように名前で呼んでくれる。それが嬉しくて


「ああ、すみません。まだ着替えの途中でしたか」
「いえ、そんなことないです!あの、ニクスさんは…」
「私はただ貴女に会いたかっただけですから。ですが、少々急いていたようですね」


と肩をすくめる仕草に、アンジェリークはふふっと笑う。そして、少し恥じらいながら


「あの、すぐに済ませますから待っててもらっていいですか?」
「ええ、構いません。でも…そうですね」


スッ、と目の前に近づいたかと思うと、ニクスの手がアンジェリークの耳たぶに触れていて

         
「せめて、イヤリングを外す手伝いはさせて頂けませんか?」


その申し出に戸惑うも、アンジェリークはこくんと頷いた。
そんなどこかあどけない様子が微笑ましく、
そして愛しく思いながらニクスは柔らかな耳元を飾るイヤリングに触れた。
シャラ・・と涼やかな音を立てて、繊細な作りのそれが外される。
          
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