短編
□ピンク色の雪
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「ねぇ圭吾さん。大学の近くにすごく綺麗な桜が咲いてるんだ」
「そうか……」
「そうかって……それだけ?」
圭吾さんと同棲をはじめて1年目の春。
昨年は二人で出かけるなんて、考えられなくてお花見なんて、しなかった。
だが、今年は違う。この1年で、打ち解けてきた俺達は、だいぶ外に一緒に食事に行ったり、映画に行ったりもするようになった。
一緒に住む前では(まぁ、ただのセフレみたいな関係だった訳だけど)じゃ考えられない。
まぁ、春だし、俺は圭吾さんとお花見に行ってみたかったりする。
どうも俺は、最近気付いたのだけれど、日本の和にロマンチックを感じるタイプらしい。
圭吾と暮らし始める前は、そんな事も気付けなかった。そんな余裕が心になかったのだ。
最近では、日本庭園にも行ってみたいと思っていたりする。
まぁ、そんな所に圭吾さんが付き合ってくれるとは思っていないが……。
「ねぇ〜圭吾さーん。圭吾、けぇ〜ごぉーー」
「うるさい」
「……」
「今日はもう寝ろ」
そりゃ、もう2人ともベッドに入ってパジャマ着て、ランプも消して就寝モードな訳だけど、寝る前のコミュニケーションを楽しんだっていいじゃないか。明日だって圭吾さんも仕事休みな訳だし、少しくらい夜更かししてもいいと思うのに……。
一緒に住みだしてからは、俺を預かってる身だから、とか言って、俺に規則正しい生活をおくらせようとしている。俺はもっと、堕落してもいいと思うけど……。
あぁ、つまらない。
「もぅいいよ圭吾さんのバカ……」
「……ねろ」
わ、機嫌悪くなった……。やだな、このまま寝ちゃうの……。
でも寝ないともっと機嫌悪くなるんだろうな。
しょんぼりして、俺が黙って眠ろうとすると、圭吾さんはそっと俺の手をにぎってくれた。
はっとして、圭吾さんの方を見ると、目を閉じて上を向いていた。
一緒に暮らし初めてから、圭吾さんはこういうガラじゃない事も見せてくれるようになった。
なんとなく、嬉しくなって、俺は圭吾さんの手を握り返し、体を密着させて眠った。