短編

□溶ける恋人たち
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 俺と紫朗が付き合いだして、2回目の聖なる夜。
 学校が冬休みになって、何の束縛もなく、ずっと2人でいられる。

 俺にとって、紫朗と居られる時間はすべて特別で、大切な時間だ。
 そりゃ改めて思わないと、気づかないけれど、街中の恋人達がそわそわしていると、意識して、俺が紫朗と居る時間が大切だって、嫌でも考えさせられる。

 

「健太郎〜〜! ごめん、待った?」

 頬っぺたを真っ赤にして、走ってくるのは俺の可愛い恋人の紫朗だ。
 終業式が終わってから、一度家に帰って着替えを済ませた俺たちは、デートっぽく駅前の広場で待ち合わせをしていた。

 おれたち2人は、別れの危機って奴を経験した事がある。
 まぁ原因は、俺たちが互いに勘違いをしていたせいだっただけだが。
 
 そのかいあって、俺は以前より、こいつをベタベタに愛してしまっている。

「だいぶ待ったよ」

「ごめん。お母さんが、マフラーしろとか手袋はめろとか煩くて時間かかった」

 だからか、全体的にモコモコな服装なのは。
 昨日から冬至を過ぎて、一気に寒気団が流れ込んできたせいで、ぐんと寒くなってきたこのごろだ。
 俺も紫朗に風邪でもひかれて、会う時間が減るのは勘弁だ。

「そっか、じゃぁキス一つで許してやるよ」

 健太郎は不適の笑みを浮かべる。

「けっ、健太郎! 何言ってんだよ〜〜」

 紫朗は顔を赤くして、キョロキョロと人目を気にする。
 当たり前だろう。そこには、待ち合わせをしている人や、通行人が沢山いるのだから。

「冗談だよ」

 紫朗が恥ずかしくて拗ねてしまう前に俺は、冗談にする。
 本当は今ここで、してくれたら嬉しいんだけど……。

 ニッコリ笑って、俺は紫朗の手をとり歩き出した。
 これくらいは許されてもいいと思う。
 なんたって聖なる夜だしね。

 まぁ、キリストはこういうの許さないんだろうけど、日本じゃクリスマスはキリスト生誕の祝いって言うより、ただの全国的なイベントって感じだから関係ない。

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