短編

□金魚のチカラ
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アイツの部屋には一匹の金魚がいる。
高校生にもなって、金魚を部屋で大切に飼っているって、どうなんだろう?
まぁ、人それぞれだが。

小さな水槽は、とても綺麗で、手入れも行き届いている。
俺はその金魚に嫉妬していた。
大切にされていて、いつもアイツと一緒で、アイツの寝顔なんて見れて。
俺なんて、アイツに好きの一言も言えずに、ずっと普通の友達やって、そんなにいつも一緒に居れない。


ある朝、夢の中にアイツが可愛がっている金魚が出てきた。
金魚は空気中をスイスイ泳いでやって来た。
それから、俺の前までやって来ると、こう言った。

「ずっと見てるだけでいいの? 僕の事うらやんだって、何も変わらないよ」

そこで夢は途切れてしまった。
しばらく現実と夢との間をさまよった。
きがつくと、もう朝だった。


そして、次の日学校に行くと俺の席にアイツが座っていた。
クラスも違うし、こんな事珍しい。
なんせ、俺は朝早く、誰も居ない教室が好きだから、いつも教室に着くと誰も居ないのだ。

ポツンと俺の席に座っているアイツに声をかけた。
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