短編

□線香花火に願いを…
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ある晩、雄一(ゆういち)は二階にある自分のへやで、漫画を読んでいた。
すると外の方から声が聞こえた。
窓を開けて下を見ると、幼馴染の秀成(ひでなり)がいた。

「雄一、一緒に花火やろうよ」

秀成は、大量の花火を見せてくる。

「どーしたんだ? そんなに沢山、こんな時期に」

まだ花火をするには少し早い時期だ。

「なんか親父が、会社の付き合いで買わされたみたいなんだ」

でも、なんでこんな時期なんだよ? と、心の中でツッコミつつ。

「分かった……今行くよ」

俺、白川(しらかわ)雄一は今外に居る、小島(こじま)秀成に片思い中だ。
今まで誰も好きになった事のない俺が、最近になって、秀成の事が好きだと気づいたのだ。
もしかしたら、気づいてなかっただけで、ずっと好きだったのかもしれない。

好きだと、自覚したところで、何も変わりはしなかった。
だが気がつくと、いつの間にか秀成を避けている自分がいた。
秀成も敏感なやつだから気付いているだろう。

気まずいながらも外に出た。

「待たせたなっ」

「いや、そんなに待ってないよ、いつもの公園に行こうか」

いつもの公園とは、昔から二人がよく使う公園だ。
そこで花火も何回かした事がある。

「うん、行こう」

それから二人で公園に向かった。

公園につくと、そこには誰もいなかった。
当たり前だろう、この時間、普通はこんなさびれた公園に来たりはしないだろう。
その公園は、たいした遊具もないし、薄暗く寂しい感じだ。
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