短編
□恋するブラザー*前編*
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隆志(たかし)は欠伸をしながら朝の光を浴びていた。
もう兄貴を起こす時間だと言うのに、頭がボーっとして窓際に座り込んだまま、二度寝の体制に入る。
うとうとしならら先ほど見ていた夢の続きを見たくて、夢に入り込もうとしていた。
ドタドタドタッ!!
ものすごい足音に夢の世界から現実へと引き戻されて、何事かと思いながら部屋の入り口の方をボンヤリ見つめる。
バターンッ!
「はぁ…はぁはぁ……」
扉を開けたのは隆志の兄の慶志(けいし)だった。
「おい〜〜お前なんで起こさないんだよっ!」
「あ……」
「お前のせいで遅刻じゃね〜か!!」
朝っぱらから兄に部屋に怒鳴り込まれて隆志は気分を悪くした。
自分目覚ましでもかけて起きればいいだけの話なのに、毎日人に起こさせてる人の横暴な発言に反論しようとした時。
「やべっ!! シャワー浴びなきゃいけねぇんだっ!」
そう叫ぶと慶志はまた大きな足音を立てて出て行った。
「……高校生にもなって弟に起こさせるなんて、どういう神経してんだあいつは」
思わず口にでてしまい、隆志は慌てて立ち上がった。
リビングへ下りていくと、母が朝食を用意してあり、父も殆ど食べ終わっていた。
「慶志は朝から元気だなぁ」
笑いながらそう言う父を見て少しムッとする。
「そうね。あの子は本当に元気に育ってくれたわ」
微笑ながら母がそう言うのにまたまたムッとした。
両親は慶志に甘い。
小さい頃体が弱かったせいだろうと言う事は分かっている。
でも……なんか釈然としない。