長編
□隣に虜〜田口さん家の息子さん〜
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何でこんな事になったのか、何度考えても答えはだせずにいた。
「はぁ……」
「お、どうしたんだ玲一(れいいち)? ため息なんかついて」
大学生の俺は、講義も終わって、ノートなどを片付けながら、知らず知らずのうちにため息をついていた。
何事にも楽観主義で、明るいのがとりえの俺のため息が珍しいのか、高校の頃からの悪友のシンは、何事かと興味津々な顔を隠さずに聞いてくる。
「うん……ちょっと……」
「さては、恋だな」
シンはニヤリと笑った。
「――っ、こ、こ、こ、こいぃ!?」
恋と言う言葉を聞いて、俺はかなり動揺してしまった。
「ははっ素直なやつ、図星だな」
「えっ、うっ。いや、違うと思う」
「相手は誰だよ」
こ、こいつ……何で恋だって決め付けてんだよまったく。
俺はちょっと不機嫌そうな顔をしながらも、俺の頭を占めて、悩ませてくれる原因となった先日の事を思い返していた……。
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