長編

□甘いココアを一緒に
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あのときの俺は、君に恋をしていた。


いつもの喫茶店、いつもの席で、いつものココアを飲んでいる、栗色の髪をしたカッコイイとは言わないが、綺麗な顔立ちをしている男が居た。

その男の名を安永聖二(やすなが せいじ)という。
聖二は切なげに1人の人間を見ていた。

聖二は毎日と言っていいほど、この喫茶店に来ている。
この喫茶店は、聖二の勤める会社から徒歩で10分といった所だ。
そんな聖二の目的が、この喫茶店の店員だ。
名前は建部(たけべ)とマスターに呼ばれていたため知っている。
聖二はこの建部という店員に恋をしているのだ。

いつも建部にばれないように、こっそりと盗み見するように見ているのだ。

年齢は、聖二より年上だろうか、スラリと伸びた足に、スッと整った眉毛、キリッとした細めの瞳は、なんだか優しそうな感じがする。
きっと優しい人なのだろう。
黒い髪と、黒いエプロンが、よく似合っている。


そんな建部との出会いは、1年くらい前にさかのぼる。
たまたま、この喫茶店に入った時、生まれて初めて一目惚れを経験した。
その相手が建部だったのだ。

生まれて初めての一目惚れだが、初めてなのはそれだけではなかった。

そう、一目惚れの相手は男性だったのだ。


初めての一目惚れ。

初めての同姓への思い。

相手に伝える訳にもいかない、きっと軽蔑されて終わるだろう恋に、聖二はこの1年ずっと、悩み続けていたのだ。
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